知られざる「マルチビジネス」の世界 経験者が語る「月収150万円」と「借金700万円」の生活

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親に借金がばれて

 そんな西尾さんがマルチを止めた理由は、先にも触れたとおり700万円の借金があったからだ。

「3つ目にやっていた化粧品や浄水器のビジネスはうまくいっておらず、一方でチリツモで溜まっていた借金があり、とうとう自転車操業が回らなくなりました。で、仕方なく父に『20万円貸してくれない』と相談したら『なんで?』となり……。実家暮らしでしたが、それまで両親は借金のことはもちろん、私がやっていたマルチビジネスのこともよく分かっていませんでした。マルチの活動が忙し過ぎて、遊びにも行かずに働いているから、母に『友達と遊びにいったりして、もっと人生楽しんでよ』とは言われていましたけれどね」

 そもそもマルチを始めたきっかけも、母親の存在があったと語る。

「父は過去に事業に失敗しており、母はパートを掛け持ちしていたんです。だからお金で苦労をかけたくないという気持ちが、マルチを始めたきっかけではありました。上手くいっていたころは、大きい額を実家に入れることもできました。けれど結果的に700万円の借金を抱えてしまい、情けない気持ちでしたね。借金を知った父は、すぐに私のアップ(親会員)に電話をかけ、『悪いけど明日からこの子にこの仕事はさせない』と告げました。借金のうち、半分の350万円は銀行などから、残りはいわゆる街金から借りていたんですが、筋のよくない後者の分はとりあえず親に立て替えてもらい、全額を働いて返すことになりました」

 その後は昼を化粧品会社で働き、夜は週3回、北新地のクラブでヘルプとして働いた。3年半かけて借金は全て返済。現在は“人を誘うビジネスはしない”と心に固く誓い、マルチにはもちろん関わっていない。

「寝食を忘れて2年半も取り組んだのに、700万円も借金作って、親に迷惑をかけて……。愚かとしか言いようがない。唯一、この黒歴史から得たものがあったとすれば……。この本を書けた、ということでしょうか(笑)」

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『FNN Live News α』レギュラーコメンテーター、デイリースポーツ紙にて「最新流通論」を連載中。

デイリー新潮取材班編集

2021年8月16日掲載

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