裁判も企業の人材採用も「気まぐれ」なのか? 意思決定の「ノイズ」と人間の未来 未翻訳本から読む世界(1)
「バイアス」という言葉は、今ではビジネスの現場などで普通に聞かれるようになった。
この言葉が「先入観」や「偏見」といったニュアンスで使用されるようになった起源には、ひとつの論文がある。心理学者のダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーが1974年にサイエンス誌に発表した「Judgment Under Uncertainty: Heuristics and Biases (不確実な状況下での判断:ヒューリスティクスとバイアス)」である。人間の思考の系統的な偏りを研究した二人は「行動経済学」の創始者となり、心理学者にもかかわらず、カーネマンは2002年にノーベル経済学賞を受賞した(トヴェルスキーは1996年に死去)。...