台頭著しい「女性芸人」たちの歴史 山田邦子、野沢直子、清水ミチコが果たした役割
2000年代に入ると…
■2000年代
既にリポーターとして評価を得ていながら、吉本総合芸能学院(NSC)でお笑いを学び直した女性芸人が2000年にデビューした。友近(48)である。
出身地である松山市の松山東雲女子大在学中から地元テレビ局でリポーターをしていたので、話し方は明瞭。中学2年の時、MBS(大阪)が主催した「全日本ジュニア歌謡選抜 全国大会」で準優勝したほどだから、歌もうまかった。どんな道でも成功しそうな人が、あえて芸人を選んだ。
世に出るまではウエイトレスなどのアルバイトで生活費を稼いだが、その一方で客たちの生態や人間模様を観察していたという。これは売れっ子になる前の伊藤沙莉(27)と全く同じだ。モノマネをする芸人も他人を演じる役者も大切なことは一緒なのだろう。
2007年には渡辺直美(33)がデビュー。頭が悪くて高校に行けず、アルバイトで学費を貯めてNSCに入ったという説を信じ込んでいる人がいるが、それは誤解にほかならない。
父親が日本人で母親が台湾人。渡辺も台湾で生まれた。その後、日本にやって来たものの、両親が離婚したため、渡辺は日本語が不得手な母親に育てられた。高校に行けなかったのは頭が悪かったせいではなく、日本語の習得に苦労していたためだ。
今となっては母親と暮らしたことが良かったはず。才能溢れる渡辺は感覚もグローバルだ。米国エンタメ界が渡辺に注目するのもうなずける。
2007年には柄本明(72)率いる劇団東京乾電池の研究所で知り合った阿佐ヶ谷姉妹がデビュー。2人は2018年に「第2回女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝した。
■2010年代
サイコパスなキャラに豹変したり、おかしな一般人を真似たり、キレッキレのダンスを披露したりで人気が出たのが、2013年デビューのゆりやんレトリィバァ(30)だった。
NSCを首席で卒業し、日本テレビの2017年の「第1回女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝。今年3月のフジ「R-1グランプリ2021」も制覇した。現代を代表する本格派の女性芸人だ。
関西大在学中は3時のヒロインの福田麻貴(32)と同じダンススクールに所属していた。その3時のヒロインの結成は2017年。3人ともNSC出身で、福田がゆめっち(26)を誘い、その後、かなで(29)を勧誘した。
最近はタレント的な活動が目立つものの、コントも漫才も評価が高い。2019年の「第3回女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝した。ネタを全て福田が考えているのは知られている通り。
アンタッチャブルや東京03らが所属するプロダクション人力舎の養成所・スクールJCA出身で2015年にデビューしたのが吉住(31)。東京03を尊敬しており、ウィットに富んだ1人コントを得意とする。
ネタの1つとして、普通の人の中に潜む異常性を見出し、それを真似るというものがある。例えば、ストーカーではないのだが、恋人がいる男性があきらめられず、告白をやめない女性だ。
こう書くとコワイはずなのだが、吉住がやると、不思議と笑える。2020年の「第4回女芸人No.1決定戦 THE W」で優勝した。
安部紀克(29)と薄幸(28)によって納言が結成されたのは2017年。現役ヤンキーのような薄幸のキャラがウケた。1976年デビューの島田紳助・松本竜介を彷彿させる。
本人によると、大酒飲みで、ヘビースモーカー。高学歴でスマートな芸人が増えただけに、この荒っぽさは貴重だ。自分のポジションをしっかりと得た。
ほかに2014年にはサーヤ(25)とニシダ(27)のラランドが結成された。上智大のお笑いサークルの仲間で、男女の臭いがしない。どちらも性別を意識させない。かつての夫婦漫才とは全く異なる。
フワちゃんはYouTubeでの人気を背に2017年にピンでの活動を開始。そして先輩芸人たちから「ホンマに吉本なのか」と言われているが、2019年にデビューしたのが、まるいるい(24)。確かにアイドル歌手、あるいは若手女優のような顔立ちだ。
本人も広瀬すず(23)が大好きで、そのモノマネをネタの1つにしている。「似ている」と評判だ。一方で貧乏も売り物にしており、その落差が面白い。
かつては「芸人顔」という言葉があったが、もはや容姿は全く関係ない。学歴も。女性芸人は良い意味で単なる職業の1つになった。
ほかにも才能に満ちた女性芸人はいるが、スペースが尽きた。違う機会に記したい。
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