中央区に「月1.5万円」で住める一軒家が 銀座まで数分…都心の島・佃島の魅力とは

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見当たらなかった寿司屋

 清澄通りを渡り、新佃島の東側、現佃3丁目で8年ほど前に訪ねた路地裏の、大衆寿司屋を探した。正確な場所は覚えていなかったので、くまなく探してみた。大通りに面した長屋は、ここ数年でほぼ全てマンションになってしまった。状態の良い木造の家屋が残る一角には、よく見ると中がオシャレに改装され、コーヒー豆卸業者の焙煎工場になったりもしている。

 結局、寿司屋は見当たらなかった。

 少しだけ不安に駆られた。佃にはいくつかうまいものを出す店があるが、地元だと思うと、いつでも行けると安心し、逆に足が遠のいていた。いつでも食べられる、というのは思い込みにすぎない。

 そう思うと、急に焦りが生じ、3丁目にあるもう一つの訪れたことのある店、レバカツの店へ向かった。店はあった。だが、

「しばらく、おまちいただきます」

 売り切れて、いま揚げているらしい。少し時間をおいて訪れよう。島の東端に向かって歩いた。佃島の北端で隅田川本流と二手にわかれた晴海運河は、この先でさらに晴海運河、豊洲運河、朝潮運河に分かれるのだが、この辺りはちょうどその分岐点の手前で、巨大なたまりのような場所になっている。そのため運河というより海に近い。よく見ると堤防にも、小さく「←河川局 港湾局→」。管理主体が川チームから、海チームになりますよ、とその境目を示していた。

文豪が愛したであろう絶景をのぞむデザイナーズマンション

 明治から大正にかけて営業していた海水館という旅館の石碑がある。島崎藤村、小山内薫、吉井勇ら多くの文人がこの旅館で執筆をした。

 というのも、この場所からの眺めは、房総半島をのぞむ、それは風光明媚なものだった……らしいのだ。

 だが、現在海水館跡だった場所からみえるのは、一面の壁。海水館前にはコンクリートの堤防が立ち、まったく景色が見えない。なんとか少しでも見られないか。うろちょろしてみると、石碑の背面に10階建てくらいのデザイナーズマンションが建っている。その名も「海水館」。

 ここの上層階からなら、堤防より上の景色が見えるはずだ。だが、もちろんオートロックだから、私が入れるわけはない。

 悔しいのでその場で、物件検索をかけると、リビングを広く取った、いかにもモテそうな物件。

 世帯向けというよりは独身向けの間取りだ。かつて、名だたる文豪が愛したであろう絶景を、こんなオシャレなデザイナーズマンションに住む、イケてる独身貴族に独占されるなんて。

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