中央区に「月1.5万円」で住める一軒家が 銀座まで数分…都心の島・佃島の魅力とは

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 テレビ東京ディレクターで、「家、ついて行ってイイですか?」などの人気番組を手掛ける高橋弘樹さん。そんな高橋さんが10年以上にわたって関心を寄せ、取材してきたのが、東京23区内にある「島」だ。都心から電車ですぐの距離にひっそりと存在する島たち――その不思議な魅力を紹介したのが『都会の異界 東京23区の島に暮らす』(産業編集センター)である。ある日、高橋さんが不動産サイトを見ていると、中央区・佃島に月1.5万円で住める家を見つけて――。

(『都会の異界 東京23区の島に暮らす』より抜粋)

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 それは、少し前のことだった。不動産サイトをネットサーフィンし、「そこに住んだら……」とひたすら、架空の生活を妄想する、いつもの趣味に興じていた。

 その時、見つけたのだ。

 東京都・中央区で4Kの一戸建て。これで、お値段1980万円。しかも有楽町線の月島駅まで徒歩2分。

 こんなことあるんだろうか?

 場所はここ、23区の島、佃島だ。計算せずにはいられない。金利0・5%、頭金は0円。年2回のボーナス時払いを無理せず、20万円として、35年ローンを組むと……。

 なんと、わずか1カ月の返済額1万5055円!

 築年数は55年と古い。建物面積も42・97平米と少し狭めだが、土地面積は33・52平米だ。もちろん借地ではない。土地の所有権つきだ。中央区に30平米オーバーの土地を持てる。夢のマイホームだ。

 そして月島駅を侮ってもらっては困る。銀座1丁目まで4分。有楽町駅まで5分。六本木まで15分という実力の持主だ。

 これで、4K戸建て1980万円。

 妄想が広がる。

23区の離島の実力

 月に1万5千円でいいのならば、手取りは10万円あれば事足りる。

 週3回本気で働けば、どんなバイトをしても月10万円は手に入るだろう。あとの4日は好きなことができる。

 創作活動に打ち込むこともできる。

 家族を大切にして丁寧に暮らすこともできる。

 東京の中央で。これが23区の離島の実力だ。どうしてこんなことが起こるのか。

 それは、佃島がすでに述べた通り、時間の流れが異なる島だからだ。

 かつて石川島播磨重工の造船所だった佃2丁目北部こそ、大規模な再開発がなされた。  

 しかし、かつての漁師町である佃島1丁目や2丁目の南部、清澄通りを挟んだ3丁目はいまだ昔ながらの路地がたくさん残されている。その路地には、木造の長屋が軒をつらねる。迷い込んでしまえば、どこかに飲み込まれそうになる怪しさと、入るものをタイムスリップさせてしまう懐かしさの混ざりあった路地だ。今は築20年の賃貸マンション住まいだが、先々は佃島に持ち家というのも悪くない。

 改めて、路地を探検してみようと思ったのだ。

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