関西青酸連続死事件「筧千佐子死刑囚」の告白 「死刑の覚悟はできている。野暮なことは聞かんといて」「灰になったら会いに来て」
「とっくに死刑の覚悟は出来てます。そんな野暮なこと聞かんといて下さい」
7月21日、大阪拘置所の15番面会室に姿を現した筧千佐子(74)は、こう語りだした。
この数時間後、死刑判決に対する弁護側の訂正申し立てが7月17日付で棄却され、21日までに死刑が確定したことが報じられた。
事実上、彼女の立場は面会時点ですでに「被告」ではなく、「死刑囚」に変わっていたことになる。以下は、千佐子死刑囚が語った現在の心境である。
改めて振り返ると、彼女は4人の男性に青酸化合物を飲ませ、3件の殺人と1件の強盗殺人未遂の罪に問われていた。結婚相談所で出会った交際相手や夫を次々に殺め、多額の遺産を手にしたその犯行の手口から、「後妻業の女」と呼ばれた。
2014年の逮捕時には、年齢より若く見える溌剌とした姿の見合い写真が一斉に報道されている。
面会室に現れた千佐子死刑囚は、逮捕時の若々しい姿は見る影もなく、乱れた白髪が肩下まで伸び、どこにでもいる老婆だった。
そして、椅子に座ると、開口一番、
「私耳遠くなってるし、お互いマスクしているから、声聞き取りにくいので、マスクとって話して下さい」
と、マスクを指差し身振り手振りを交えて告げた。むろん、新型コロナ対策の点からマスクを外すことはしなかったが、はきはきと話すその様子からは、弁護側が主張したような認知症の傾向は微塵も感じられなかった。
弁護側は1審から上告審に至るまで、認知症を理由に責任能力がないなどと主張し、一貫して無罪を求めていた。千佐子死刑囚本人は、法廷で黙秘や殺害否認をすることもあったが、一方で犯行を認める供述をしたこともあった。
彼女の弁護側が行った「判決訂正の申し立て」は、最後の不服申し立ての手段で、訂正が認められることはまずない。
千佐子死刑囚も、
「訂正申し立てっていうのをしてるんですか? 弁護士の先生がなんかやってくれてるんやと思いますけど、私、訂正申し立てって言葉は今はじめて聞いたぐらいや」
と、語り、ペンで紙に字を書く動きをジェスチャーでしながら、
「回答を訂正するとか、間違いを直すって意味の訂正でしょ? 判決の何を訂正することがあるんやろなあ。何を訂正することがあるの、どこに訂正するところがあるんやろと思って、可笑しくなりました」
と笑うのであった。
「私、色んな記者さんからも、裁判でもずっと死刑や死刑やって言われてきて、今更死刑やって言われたかて驚いたりしないですよ。そりゃ死刑やって思ってました。そんな野暮なこと聞かんといて下さい。死刑になるのは当然やろ」
何人もの人間を殺めた報いとして「当然」のことという認識なのかと問うと、
「うん。それはそうです。それだけのことはしてるんやから」
とはいえ、被害者への謝罪の言葉が出てくることはなく、
「そりゃ、この弁護士先生あかんなとか、裁判になったらこっちの言い分通ることなんてほとんどないやろとかね、色々思うことはありますよ。でもそんなん言うたって仕方ないです。私、あなたのお母さんとか、お祖母さんぐらいの年です。今まで散々死刑やって言われてきたのに、今になって死刑やって言われたからって、赤ん坊みたいに“嫌や! 嫌や!”って泣き叫んだり喚いたりしたらおかしいでしょ。そんなことしません」
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