陸上400mリレーで金メダルが狙える科学的な理由 走者4人の「最高記録の平均値」が重要

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 7月31日に行われた男子100メートルで、出場3選手がいずれも予選敗退に終わった日本の陸上短距離勢。

 しかし、落胆するのはまだ早い。8月6日に決勝が行われる4×100メートルリレーでは、十分“金”が狙えるのだという。

 その理由を科学的に解説してくれるのは、元鹿屋体育大学教授の松尾彰文氏だ。2019年まで日本陸上連盟の科学委員としてデータ分析を手掛けた同氏は、

「注目したいのは、400メートルリレーを想定して計算した、各国の上位4名のシーズン最高記録の平均値です」

 といって、こう続ける。

「400メートルリレーで銀メダルを獲った北京五輪のとき、日本はこの平均値が世界の10番目でした。さらに、4位だったロンドン五輪、銀メダルだった前回のリオ五輪はいずれも8番目。つまり、直近3大会で全て、日本は個々の走力を上回る結果を出しているのです」

 しかも、今回の東京五輪における“平均値”の順位は過去最高の5番目で、

「アテネ五輪の際、イギリスはこの順位が5番目で金メダルを獲っている」(同)

 つまり、世界最速の走者を揃えただけではメダルに結びつかないのが、リレーという競技なのである。

 そして、その妙は“バトン”にあるというのは、北京五輪400メートルリレー銀メダリストの朝原宣治氏だ。

「正直、個の力が上回るアメリカが完璧にバトンを繋いだ場合、勝ち目はないかもしれない。ところが、バトンパスで減速することが多いアメリカに対し、日本のバトンワークは技術が高く減速しない」

 勝てる理由はデータが証明しているのだ。

週刊新潮 2021年8月12・19日号掲載

五輪ワイド「『約束の地』の夢花火」より

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