侍ジャパン決勝進出 打てない鈴木誠也をどうすべきか【柴田勲のセブンアイズ】

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東京五輪 野球(決勝トーナメント・準決勝)
日本対韓国(4日、横浜スタジアム・19時試合開始)
     123456789計安失
韓  国 0000020002 71
日  本 00101003×5 91
(韓)コ・ヨンピョ、チャ・ウチャン、チョ・サンウ、●コ・ウソク、キム・ジンウク‐ヤン
・ウィジ
(日)山本由伸、岩崎優、〇伊藤大海、S栗林良吏‐甲斐拓也
◆二塁打 イ・ジョンフ 山田哲人(2)  キム・ヒョンス
試合時間3時間30分

これぞ山田という一撃

 日本が韓国を下して決勝進出を決め、悲願の金メダルまであと1勝とした。

 これぞ山田哲人という一撃だった。8回2死満塁、コ・ウソクの初球、低めの真っすぐを振り切った。打球は左中間フェンスを直撃する走者一掃の二塁打となった。

 山田は読んでいたね。前の打者、甲斐拓也が四球で歩いていた。ストライクを取りにくる。それも真っすぐで。山田らしい思い切りのよさと勝負強さがここぞの場面で出た。

 韓国ベンチは2死二塁から村上宗隆を申告敬遠し、甲斐と勝負に出た。ここは当然の策だろう。村上はそれまで2本のヒットを放っている。

 だが、コ・ウソクは制球が定まらない。顔面近くへのボールもあった。やはり、緊張していたのだろう。甲斐も同じだったろうが、しっかりと四球を選んだ。

 これで山田の殊勲打が飛び出すお膳立てができ上がった。逆にいえば韓国ベンチにとってこの四球は誤算もいいところだったろう。

 3番手・伊藤大海が7、8回を無失点に抑えたのも効いた。若さにあふれた小気味いい投球だった。真っすぐにカーブなどの変化球は切れがあった。勝利の流れを呼び込む投球だった。

 先発した山本由伸はいま日本で一番勢いのある投手だと思う。オープニングのドミニカ戦でも好投したが、この日も6回に無死から3連打で1点を返されて1死後、岩崎優にマウンドを譲ったものの、4試合で23得点の強力打線から9三振を奪う力投だった。

 岩崎は一、三塁からキム・ヒョンスにスライダーを打たれて同点とされたが、その後を連続三振に仕留めて、逆転を防いだ。韓国に流れを渡さなかった。

 最後を締めた栗林良吏にしても、日本の若い投手たちは実に伸び伸びと思い切ってやっている。心強い。

打線をいじる必要もない

 4番の鈴木誠也にはヒットがなかった。一人相撲というのか、打たなきゃいけないという意識が強すぎる。ストライクを見逃して、ボール球に手を出している。オレは日本の4番打者とどっしりと構えればいい。気の持ちようだ。普通にやればいい。

 でも、鈴木が打てないからといって、降格させる必要はない。打線をいじる必要もないと思う。いま、日本は実にいい流れで頂点に向かって進んでいる。4番が打てなくても山田や坂本勇人、さらには下位打線がうまくカバーしている。個々が自分の役割をキチンと演じている。全員野球ができている。

 日本はサヨナラ勝ちを2度やっているようにツイている。勝運がある。この流れに逆らうことはない。

 7日の決勝戦。日本の先発投手は森下暢仁、それとも大野雄大か。相手はアメリカか、それとも韓国か。総力戦でいずれにしても厳しい戦いになるだろう。簡単には勝たせてくれない。

 だからこそ勝った時、金の重みを実感するだろう。決戦まであと2日ある。リフレッシュして大一番に臨んでほしい。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮取材班編集

2021年8月5日掲載

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