U-24スペインパス回しに反則すらできない現実 明暗を分けた森保監督の言葉

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延長後半一瞬の“隙”

 後半7分に旗手怜央(23)の戻しを林がフリーで狙ったシュートはクロスバーを越え、延長前半11分の前田大然(23)のヘディングもゴール枠を捕らえきれなかった。

 これに対しスペインは、191センチの巨漢FWラファ・ミル(24)が再三、日本ゴールに迫った。たった1本のパスや(前半39分)、味方のパスが日本選手に当たってリバウンドしたのや(後半31分)、スローインから(後半43分)いとも簡単にGKと1対1の状況を作り出す。

 いずれの決定機もGK谷晃生(20)が勇気ある飛び出しでブロックしてゴールを死守した。以前の彼はプレーエリアが狭いことが気がかりだったが、今大会で最も成長した選手ではないだろうか。スペイン戦のスーパーセーブといい、準々決勝ニュージーランド戦のPKストップも含め、今大会のベストGKに選ばれてもおかしくないだろう。

 試合は後半38分、ルイス・デ・ラ・フエンテ監督(60)は18歳のペドリ・ゴンサレスに代えてOA枠のマルコ・アセンシオ(25)を起用。レフティーのFWを日本DF陣もよく研究して左足に対処してきたが、延長後半10分のあの一瞬だけフリーにしてしまった。

 左サイドでスローインを受けたミケル・オヤルサバル(24)のドリブルを警戒するあまり、側にいたアセンシオがスッとペナルティエリアに入ったのに板倉のマークが遅れた。彼の左足から放たれたシュートは弧を描いてゴール左スミに吸い込まれた。

得点できなかった日本

 日本は吉田、酒井、遠藤航(28)のOA枠3人が堅守を支え、4試合で1失点という完璧と言っていい守備を見せてきた。

 ただ、トーナメントを勝ち上がるためにはゴールが必要となる。そこで欲しかったのは、やはり「ゴールを決めきることができる」大迫勇也(31)だったが、「覆水盆に返らず」。OA枠の3人のうち誰か1人が欠けたら日本の堅守はなかったかもしれないからだ。

 そして大会はまだ続いている。キャプテンの吉田は「オリンピアン(五輪に出場した選手)とメダリストは違う」と言った。彼自身、ロンドン五輪の3位決定戦ではミスから失点し、銅メダルを逃した悔しい思いがある。それはケガで満足にプレーできなかった酒井も同じだろう。

 日本には「忘れ物を取りにいく」戦いがまだ残っている。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮取材班編集

2021年8月5日掲載

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