U-24スペインパス回しに反則すらできない現実 明暗を分けた森保監督の言葉
あと5分でPK戦
もしもスペインと10回対戦したら、勝てるのは3回もあれば良い方だろう。リーグ戦なら0-0のドローで終わったが、トーナメントでは「勝ちきる力」が必要になる。森保一監督(52)はカウンターかPK戦に勝機を見いだそうとしたに違いない。
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それが両者の力を比較して、現実的な戦略だからだ。
それは、あと5分で成功を収めつつあった。もちろんPK戦になったからといって、日本が勝てる保証はどこにもない。しかし、ボール支配率で39%対61%と圧倒されたが、PK戦なら勝率は五分五分なので、勝利の可能性は広がったはず。
それにしても日本は、スペインの猛攻によく耐えた。後半11分の吉田麻也(32)のタックルは、一度はPKと判定されイエローカードをもらった。しかしVARとフィールドオンレビューの結果、いずれも取り消された。吉田のファインプレーと言っていいスライディングタックルだった。
板倉滉(24)は再三のシュートブロックでゴールを死守し、酒井宏樹(31)はマルク・ククレジャ(23)とのマッチアップに体を張って対抗。そして中山雄太(24)は最後まで諦めずに攻撃参加した。
健闘したのはDF陣だけではない。ダブルボランチも、2列目の3人も、そして1トップの林大地(24)も献身的なチェイシングで守備に貢献した。
しかし、それが限界だった。
反則もできない日本
スペインは前半13分にオスカル・ヒル(23)がイエローカードをもらったのをはじめ、トータル6人が警告を受けている。日本は延長前半9分の酒井だけである。
その違いはというと、スペインは日本がカウンターを仕掛けると、早め早めに手を使うなどして日本の攻撃をストップしてきた。
これに対し日本は、ミドルサードで反則をしようにも、スペインの老獪なパス回しに反則すらできない。スペインは、日本のプレスを受けても落ち着いてパスを回す余裕と自信があった。
そしてゴール前までボールを運ばれると、日本は「PKは与えられない」という極限状況での守備を強いられた。精神的な消耗はかなりのものだっただろう。
勝負の明暗を分けたのは、いみじくも森保監督が言っていた。
「ゴールを決めきるところが課題」――この一語に集約される。
日本の枠内シュートは後半34分に左サイドからドリブルで侵入した久保建英(20)の放ったニアサイドへの1本だけ。
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