U-24「NZ戦」は90分で決めるべき試合 川口能活GKコーチのアドバイスがGKを救った

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上田のシュート

 このスタイルは5年前のリオ五輪の準々決勝で、コロンビアがブラジルに対して採用した戦法と似ている。

 違いは、コロンビアがフィールドの至るところでカードをもらわない程度に反則を連発したのに対し、ニュージーランドは4人の警告者が出たものの、まだコロンビアとは違いフェアにサッカーをしていた点だ。

 日本が前半11分に林大地(24)のクロスを遠藤航(28)が決めていれば、ここまで苦戦することはなかっただろう。

 これまでの日本は、メキシコ戦でもフランス戦でも前半の早い時間帯につかんだ決定機を確実に決めて、日本ペースで試合を進めてきたからだ。

 ただ、遠藤のシュートの瞬間、ボールがイレギュラーしたため、シュートは大きく上に外れた可能性がある。見た目以上にカシマスタジアムの芝は傷んで荒れていたかもしれない。

 それでも後半32分の旗手怜央(23)のヘディングシュートはゴール枠に飛ばして欲しかったし、37分に上田がフリーで放ったシュートは超決定的だっただけに、ストライカーなら確実に決めて欲しかった。そうすれば90分で試合は終わったはずだ。

修羅場をくぐった日本

 攻撃陣が、例えば久保建英(20)が厳しいマークに本領をなかなか発揮できないでいると、そのフラストレーションが守備陣にも影響したのかもしれない。

 吉田はGK谷や味方へのパスが弱く、カットされそうなピンチを招いた。冨安健洋(22)もいつもの安定感に欠けた。

 それでも失点しなかったのがPK戦につながった。勝負がPK戦に決まった瞬間、ニュージーランドの選手は「狙い通り」と思っただろうが、日本も数々の修羅場を経験してきただけに動揺はなかった。

 年齢制限のある五輪の男子サッカーは、予選で戦ったチームと本大会に出場するチームはまるで違うことがある。

 今大会で言えば、フランスが顕著な例だろう。招集したい選手がクラブの拒絶にあい、思い通りのチーム作りができなかった。さらに本大会は、オーバーエイジ(OA)枠もある。

 しかしながら五輪本大会では、グループリーグの結果がダイレクトに実力に反映される。ニュージーランドに関して言えば、初戦で韓国に劣勢を強いられながらも90分間を無失点に耐え、ワンチャンスをモノにして勝点3をつかんだことで初のベスト8進出を果たした。

残りは2試合

 試合前は楽観論が漂っていたが、実際に対戦してみると、かなり厄介な相手だった。日本は、PK戦で負けていた可能性もある。しかしそのハードルを、簡単ではないが何事もなかったようにクリアした。

 次の相手は、すでに大会前に戦ったことのあるスペインで、これをクリアすればグループリーグで対戦したメキシコか、19年の海外遠征で対戦したブラジル(U-22日本対U-22ブラジルで3-2の勝利)ということになる。

 いずれも世界の強豪ではあるが、ニュージーランドのように専守防衛で来ることはないだろうし、日本も「いつでも点が取れる」と慢心することもないだろう。

 メダルを賭けた準決勝とその先には、スペクタクルな試合が待っているに違いない。残り2試合、五輪のサッカーを存分に楽しみたい。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮取材班編集

2021年8月2日掲載

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