中川大志×新木優子 日曜夜を気楽に過ごす「ボクの殺意が恋をした」

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 NHKのコント番組で「コメディ筋肉」を開花させた中川大志と、ここ最近出ずっぱりの新木優子が組んだドラマ「ボクの殺意が恋をした」。意外な楽しみ方をテレビ評論家・吉田潮氏が伝授する。

 今期ドラマの中で最もくだらないというか馬鹿げた設定が意外な笑いを誘う「ボクの殺意が恋をした」(日テレ・日曜22時半~)。殺し屋がターゲットに恋をしてしまうという設定を聞いて、一瞬あの名作がよぎった。長瀬智也主演「うぬぼれ刑事」(2010年・TBS)だ。容疑者の女性にいちいち恋をしてしまう刑事が、逮捕or婚姻の選択を迫るというラブコメディだったが、こっちは殺し屋なのでもうちょっとシビアになるのかなと思ったら……いや、全然シビアじゃない! むしろくだらなさに拍車をかけて、清々しさまで感じる!

 主演は中川大志。中川と言えば、「少女漫画原作映画御用達」期が続き、胸キュン青春系一人勝ちの印象も強い。ただし、彼のコメディ筋肉を開花させてしまったのがウッチャンこと内村光良だ。NHKのコント番組「LIFE!」でレギュラーとなった中川は、あれよあれよというまに白目の剥き方やあごのしゃくれ方などを会得し、コメディ作品に全方位対応可能な人材となった。もうただのイケメンではない。ちょっとやそっとのおかしなことをしでかしても違和感のない俳優である。

 その中川が演じるのはイケメンだが、運も間も悪い青年・男虎柊(おのとら・しゅう)。幼い頃に両親を亡くした後、育ててくれた男虎丈一郎(藤木直人)の清掃会社で働いていたが、丈一郎が殺害されたことを機に、人生は思いもよらぬ方向へ。なんと、丈一郎は警察の秘密組織に所属する腕利きの殺し屋だった。丈一郎とともに長年面倒をみてくれた刑事・綿谷詩織(水野美紀)から真実を明かされ、殺し屋稼業の後継者として丈一郎の復讐を誓うはめに。

猛暑にはちょうどいい抜け感

 丈一郎を殺したのは人気漫画家・鳴宮美月(新木優子)とわかり、復讐のために近づくも、抜群の間の悪さからなかなか手を下すことができずにいる。恩人の復讐そっちのけでうっかり美月を守ってしまうボディガードになっちゃうわ、美月は初恋の相手だったとわかっちゃうわで、暗殺計画は遅々として進まず。

 実は、美月の命を狙っている殺し屋がもうひとり。通称「デス・プリンス」(鈴木伸之)が別ルートの依頼で動き出している。表向きは人気モデルの八乙女流星として活躍しているが、実際には芸術的な殺し方にこだわりのある凄腕殺し屋っつう設定ね。

 ターゲットに恋心を抱く戸惑い、そしてデスプリとの暗殺競争、恋の三角関係……。もう馬鹿馬鹿しいったらありゃしないのだが、真剣に集中してドラマを観ることを許さない猛暑にはちょうどいい抜け感がある。気合いも根気も不要の日曜夜のひとときを提供。

「いや、もうくだらなさすぎて、どうでもいいわ」と捨てるのはチョイ待て。中川がちょいちょい見せるコメディ筋肉を見守ってほしい。アクションとか鍛え上げた筋肉というかっこエエ話ではなくて、間の悪さで右往左往するヌケサク感と、瞬間的に魅せる変顔を楽しんでほしいのだ。

 また、最も馬鹿馬鹿しいと思うのはデスプリがあまりにも非合理的な殺しにこだわるところだ。凄腕の殺し屋という割に、手の込んだ仕掛けが大好きで、しかもことごとく失敗する。風船やらヨーヨーやら灯籠やらを使い、不確実すぎる化学反応を利用した殺しの手法。米村でんじろう先生か! とツッコミの嵐。心が汚れた大人としてはいろいろと納得のいかない部分も多いのだが、これは夏休みのお子さん向けってことで、腑に無理やり落とそうと思える。

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