ワクチン政策失敗で感染拡大、五輪も台無し…菅政権に忍び寄る総選挙大惨敗の足音
低接種率に驚く外国人
だが、さっそく高齢者の接種開始がずれ込む。河野太郎ワクチン担当相は1月、「高齢者の接種開始は、早くても4月1日以降にずれ込む」としながらも、「6月の第3週までに2回目の接種を終える」見通しを示した。
菅首相は7月30日の会見で「高齢者の73%が2回目のワクチン接種を終えた」と強調したが、本来ならとっくに終わっているはずだった。
「その後も注射器の確保などに混乱が生じました。その都度、菅政権はスケジュール通りに進むと説明してきましたが、6月に入ると全国知事会が疑問を呈します。ファイザー製ワクチンの供給量が減少することから、必要量が確保できないと国に助けを求めたのです。しかし河野大臣は『必要な量は配分している』としか答えませんでした」(同・政治担当記者)
7月、全国知事会の憂慮は現実のものとなった。ワクチンの供給量が不足し、「1回目を打ったのに2回目の予約ができない」人の存在が大きく報じられることになった。
「五輪の取材で来日した外国人記者と話していると、『日本でこんなにワクチン接種率が低いとは思ってもみなかった』と驚いています。彼らの母国では、もっと接種率が高いのだそうです。菅さんがどれだけ会見でワクチン接種の成果を誇っても、なかなか有権者の理解は得られないのではないでしょうか」(同・政治担当記者)
世界のスピード
イギリスのオックスフォード大学が運営している「Our World in Date」は「データで読む私たちの世界」というタイトル通り、様々な「世界ランキング」をデータに基づいて示しながら公表している。
この公式サイトに「新型コロナウイルスを2回、接種した人の割合による国ランキング」が公開されている。
ランキングによると、7月30日現在、日本は27・99%で、なんと第73位だ。この数字だけで、どれだけ遅いか分かるというものだが、詳しく見てみよう。表をご覧いただきたい。
「ワクチン接種率を見ると、経済的に発展し、人口が少ない国が上位を占めています。ワクチン購入の資金があれば、国民が少ないと小回りがきくのは言うまでもありません。トップのジブラルタルはイギリスの海外領で、接種率は100%を超えました。外国人労働者にも接種しているからと言われています。日本はカンボジアやモロッコと同じレベル。両国に失礼なことを言うつもりはありませんが、これだけも日本のワクチン接種率が低いことは一目瞭然です」(同・政治担当記者)
英独も高い接種率
では、いわゆる“先進国”の中で、日本はどれくらいのワクチン接種率なのか見てみよう。まず名目GDPのランキングと「2回接種率」を組みあわせてみる。日本のGDPはアメリカ、中国、に次ぐ世界第3位だ。
ちなみに「Our World in Date」のランキングで、中国の割合は空欄になっている。そのため表は11位のロシアを加えた。
「国民が集団免疫を獲得する1つの目安が、2回接種率が6割と言われています。カナダとイギリスが迫る勢いです。実際、イギリスは感染者数が減少していると話題になりました。アメリカとフランスも5割に達するペースです。翻って日本は3割を目指している段階ですから、遅いと言われるのも当然でしょう」(同・政治担当記者)
更に「国民1人あたりのGDPランキング」とも組みあわせてみる。この場合、1位はルクセンブルグとなり、日本は23位だ。ベスト10に日本を組みあわせて表を作った。
有権者の判断は?
「当初、菅首相は、オリンピック・パラリンピックを有観客で実施し、その勢いで総選挙を勝とうと考えていたわけです。先進国でもアイスランドは7割を超え、カナダでも6割に達しようとしています。これくらいの割合に達していれば、“反オリンピック・反菅”の声が大きくなることはなかったと思います」(同・政治担当記者)
菅首相は、できるだけ総選挙の時期を引き延ばすと言われている。ワクチン接種率が上昇すれば、国民の間に安心感が増し、自民党に投票する有権者が増えると考えているからだ。
「ただでさえワクチン接種のペースが遅いというのに、ここに来てさらに感染者が増えています。これでは国民の菅政権に対する不信は募るばかりです。五輪でいくら日本のメダルラッシュが続き、お祝いムードになったとしても、コロナの感染拡大で相殺されてしまいます。秋には接種率は今よりかなり上がるでしょうが、国民はそれを政権のおかげだとは思わないでしょう。このまま総選挙に突入したら、自民党は惨敗する可能性が高まってきました」(同・政治担当記者)
註1:朝日新聞1月27日朝刊「【時々刻々】ワクチン、いつ私たちに 見通せぬ承認・供給量 政府、全体像を示さず 新型コロナ」
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