「差し上げましょうか?」ふかわりょうが感動した、黒木瞳から届いたプレゼントとは

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黒木瞳さんとの出会い

「すごく面白かったです。これね、主人とも話したんですよ」

 そう、はしゃぐように私に報告してくれます。これが、女優・黒木瞳さんとの出会いでした。

「そんなに読んでくださったんですか」

 期待をしていなかった分、喜びも大きく、ピンと張られた針は、一瞬にして柳のようにしんなりしました。いたく気に入ってくださったようで、夫婦の会話の中にも度々私のエッセイの話が出ているのだとか。

「私は、台本も汚すのが好きで、この本もほらね」

 貼りすぎて付箋がなくなってしまい、自らペンで印を付けているようでした。

「アイスランドに行かれたんですよね」

「ポルトガルのお話も、とても素敵でした」

「娘には、早く結論言ってって言いますよ」

不意な質問「歯を磨くとき、どうされていますか」

 精読がうかがえる会話。心のディスタンスはなくなっていました。そして、日常生活に関する話題となったときです。

「歯を磨くとき、どうされていますか」

 不意に、黒木さんから尋ねられました。というのも、旦那様が歯を磨く時、目を瞑っていることに気づきで、「ねぇ、どうして歯磨きするときに目を瞑るの」と訊ねると、旦那様は適当にやり過ごしたのだそう。微笑ましい夫婦のやり取り。確かに、歯を磨く時の行動は、人によって異なります。目を瞑る人もいますし、磨くスピードがやけに速い人、あまり音を立てない人。私は、鏡の前でじっとしているのですが、鏡の前にいなくちゃいけないわけではありません。

「それは、自分の顔を見ているのですか」

 訊ねられるまで、意識したことはありませんでした。顔を見ているような、見ていないような。

 その一方で、洗面所を離れる「徘徊型」。歯を磨きながらウロウロしてソファーに座ったり、会話をしたり。途中、つまづいたら大惨事なので、見ているだけでヒヤヒヤします。じっとしたり、目を瞑ったり、うろうろしたり。無意識の行動に、各々の性格が表れているかもしれません。

 そういえば、かつてトレンディー・ドラマが流行っていた頃、固定電話のコードを自由に伸ばし、部屋中を歩きながら話しているシーンがありました。スマホになって、そういったシーンはなくなりましたが、あれがかっこよかったのは、束縛されず自由に動いているからでしょうか。

 もう一つ、スマホの普及で見られなくなったものをあげるとしたら、謎のイラストです。家の固定電話の隣のメモ用紙に、時々、謎の少女の顔が描かれていることがありました。それは、母が長電話をしている間に無意識で描いたもの。そうです、固定電話の際は、話ながら何か描いていました。幾何学模様だったり、ひらがなだったり。ケータイやスマホになって、動く自由を手に入れてからは、その場でじっとしている必要もなくなったので、無意識にイラストを描くこともなくなったようです。

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