CMの「謎設定」の楽しみ方 逆手に取ったファンタ「先生シリーズ」は大ヒットに(中川淳一郎)
日清オイリオのCMの二宮和也(嵐)と西畑大吾(なにわ男子)に見られるように、CMの「謎設定」が気になって仕方ありません。同社CM「鮮度のオイルシリーズ」では二人がさまざまな料理に4種類の油をかけ「植物のチカラ」をアピールします。「ラーメンにごま油」「ピザトーストにオリーブオイル」「ヨーグルトにアマニ油」「スープと野菜ジュースに有機えごま油」ですね。
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毎回「この二人はどんな関係なのだろうか……」と思っていたのですが、有機えごま油の回で西畑が「お母さんにも教えなきゃ!」と言うことで二人の関係が分かりました。二宮(38)と西畑(24)は兄弟なのでしょう。公式にその説明はないものの、そう解釈できます。
ここからは広告会社出身で現在も広告・広報関連の仕事をし続けている私の臆測を述べます。「お母さんにも教えなきゃ!」の一言が出たのは、日清オイリオ社のお偉いさんが「このCMでは“男子料理”のイメージが強すぎる! 一般的な家庭向けでもあることをPRしなさい!」と言ったからなのでは。
元々「有機えごま油」のCMを見る前のバージョンでは「一体この二人はどんな関係なのか……」と思い続けていました。14歳も年齢の違う男が爽やかな朝と思われる時間帯に同じ家で一緒に料理をしている。若手を養ってあげる先輩芸人と同じ事務所の後輩なのか? ゲイのカップルなのか? いつまでたっても実家から出られない兄弟なのか……。それなのになぜ母親が料理をしてくれていないのか?
これまでのプレスリリースを読んでもまったくもって設定が分からなかったのですが、「お母さんにも教えなきゃ!」の一言でようやく「あー! この二人は兄弟なんだ!」と分かりましたが、やっぱり分からないのが「なぜ14歳も年の違う兄弟が一緒にいるんだ……」です。
CMにおける「謎設定」ってのがあるのですが、20年以上前のこと。電気カミソリのCMで、通勤電車の座席に座る女が吊革を持って立つ同僚と思われる男の首に残ったヒゲを抜く、という演出がありました。これにより、逆に商品であるカミソリの「剃り残しのなさ」を説明したかったのですが、いきなり同僚の首のヒゲを抜くって非常識です。
結局CMって、とにかく商品を売るために無茶苦茶な設定にする必要があるのでこのぐらいは目をつぶらなくてはいけないのですが、その制約を逆手に大ヒットしたのが2000年代前半のファンタの「先生」シリーズです。
非常識過ぎる先生が登場する中学校で先生が暴走し、2人の生徒が最後に嘆きながらファンタを飲む。「ドラゴン先生」篇ではブルース・リーみたいな教師が上半身裸で「アチョー!」とカンフーをしながら喚きまくり黒板に何やら書き「ここテストに出ます」と言い、中学生が「やってらんねぇ」とたそがれるというものです。
中学生のやるせなさを潤すファンタ、ということですが、これぞ私の一番好きなCMシリーズです。ちなみにこのCMのクリエーターからボツネタを聞いたのが、「女子は水泳、男子は写生!」というものです。これはウケたものの「さすがにないのでは……」とCM中の生徒のような反応をされたそうです。