韓国でコロナ特需を享受する日本ブランド 現地メディアは「いずれ失速する」と言うが
任天堂は10倍のV字回復
コロナ禍で売り上げを伸ばした「特需」については世界で話題にのぼるが、韓国では日本ブランドが元気だという。コロナの収束と共にその勢いは失速すると現地メディアは論評するが、果たして……。ソウル在住・佐々木和義氏の寄稿。(*1ウォン=0.096円)
韓国任天堂は2020年4月~21年3月期、韓国に進出して以来、最大の4000億ウォンの売り上げを記録した。韓国で新型コロナウイルス感染症が拡大しはじめた昨年3月、学校が休みとなり、政府が在宅勤務の導入を推奨すると、巣ごもり生活をはじめた人々が、ニンテンドースイッチ(Nintendo Switch)や関連ソフトに群がった格好だ。
任天堂の韓国進出は2006年。2009年に2942億ウォンを売り上げたが、その後、低迷を続け、2016年に売り上げは392億ウォンまで落ち込んだ。新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年、10倍を超える売り上げを達成したことになる。
ニンテンドースイッチを販売している大元メディアは、20年1月から6月の半年間で、対前年比61.5%増となる17万3812台のスイッチを販売したという。3月に入って「あつまれ どうぶつの森」が発売されると勢いは加速し、4月から6月期に前年を89.7%上回る32万5545本のスイッチ用ゲームソフトを売り上げた。
コロナ特需は、ホンダとヤマハ、スズキにも広がっていった。
その展開はいささか「風が吹けば桶屋が儲かる」的だと言える。ソウル市は地下鉄の最終電車の運行時間を繰り上げ、また、間引き運転を開始。車内防疫を担当する職員の負担を軽減する名目だったが、在宅勤務やオンライン授業などの広がりで利用者が減少したこともその判断に影響したようだ。運行本数が減った結果、駅のホームや地下鉄車内が密となり、他人との接触を避けたい人々が通勤手段を地下鉄やバスから日本製オートバイに切り替えたのだ。
日本製オートバイの理由
加えて、食品などの出前需要の急増も日本製オートバイの売り上げを押し上げることにつながった。なぜ日本製で韓国製でないのかは後述する。
一方、政府による営業時間の短縮命令や会食制限などにより売上が落ち込んだ飲食店は、出前販売に活路を見出そうとして、配達代行会社と契約。代行会社は専属ライダーを採用し、二輪車をリースして配達業務を請け負うのだが、注文をさばき切れないため、アルバイトのライダーを急募した。
アルバイトのライダーは、二輪車などを自身で用意する必要がある。失業者や無給休暇で収入が落ち込んだ人、残業や会食がなくなって帰宅時間が早まった人たちなどが、ホンダ・ヤマハ・スズキといった、これも日本製オートバイを購入し、ライダーとして登録した。
ライダーたちは、ハンドルに据え付けたスマートフォンで注文を確認し、地図アプリで店や配達先を確認しながら配達する。韓国は125ccまで普通自動車免許で運転ができることから、運転が容易で配達効率が良い100cc~125ccのスクーターが好まれている。韓国メーカーだとギア付きが主流で、商用スクーターは日本ブランドが充実している。
もっともそれ以前に、韓国製商用オートバイは購入から2年経つと市場価値はほとんどなくなってしまう。ブランド力の弱さのせいだ。コロナが収束してオートバイが不要になったとき、日本製は相応の値段で売却できるが、韓国製は鉄屑同然。日本製は韓国製より高額だが、業務効率に加えて、燃費、維持費、リセールバリューなど、トータルコストで見れば安いというわけだ。
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