「お笑いは一日を幸せにするけど、小説は人生の栄養になる」Aマッソ・加納が執筆を続ける理由

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SNSをやらない理由

――最近はYouTubeの「Aマッソ公式チャンネル」の勢いがすごいです。いろいろな芸人さんとのコラボレーションも増えていますが、どのような思いで日々更新されているのでしょうか。

「YouTubeの目的は人によって違うと思いますけど、うちらは自分たちだけのメディア、番組と思ってやっています。そうすると、相方と二人でずっと自分らの世界でやってるよりも、いろんな笑いの種類を見せたいと思って、最近はゲストも多くなっています。プロデューサー的に“この芸人をこう見せたらおもろくなるかも”みたいな視点を持つようにしていて、“Aマッソのチャンネルに出たら得をする”と思ってもらえるのが理想です。実際、チャンネルに出てくれた後輩から『あの後ライブオファー増えました』と言われることも増えました」

――尖った企画も多い印象です。

「別に尖っている気はないんですけどね、こっちからしたら(笑)。まあ、“これはあんまり再生されへんやろな”と思いながら撮っているものもあります。YouTubeは“答え合わせ”って言われるぐらい、タイトルとサムネから内容が分かるものがウケやすいんです。映画に例えると、予告編で内容全部わかるやん、みたいなものが再生される。ただ、バズらなさそうな企画でも撮りたいものは迷わずやります」

――YouTubeに力を入れる一方、SNSをやらない理由はあるのでしょうか。

「何か自分が作ったモノに対して、SNSですぐに言い訳ができる状況があんまり好きじゃないからですね。SNSをやることでオンとオフの境目がなくなってしまうのも嫌なんです。SNSを上手く使えばいくらでも媚びたり、好きになってもらったりできると思うんですけど、自分が生み出したモノ以外で評価されるのは、あまり好みじゃないですね。やった方がいいのは分かるんですけど、これ以上自分を嫌いになりたくないので(笑)。ただ、SNSをやっていないことで番組の宣伝などで力になれないこともあるので、申し訳なさは感じています。なので、他の部分で補えればと」

「自分たちよりやりたいことをできている人」がいないように

――最近は二人のキャラクターも浸透してきたように見えます。

「今までは主語がAマッソやったのが、最近は二人のキャラクターが何となく伝わってきたのかなって。村上はめちゃくちゃアホやし、私はとにかく誰にでもキレるし(笑)。ネタ作りにしても、前は村上っぽいセリフが書けてなかったんやと思います。ネタを書いても、“どっちがボケやろうか”みたいな。今は“このネタなら村上がボケ”とかはっきりしてきました」

――これまでジェンダー論的に語られることも多かったAマッソですが、女芸人を巡る議論はどう見ておられるのでしょうか。

「女芸人みたいなくくりの流行のピークが過ぎた印象ですね。世間的にはどうか分かりませんが、芸人の世界では“女芸人だからどう”みたいなノリはひと段落して、次のステージに入っていると思います。女芸人という属性に加えて、プラスお前は何ができんねん、っていうのを見られるようになってるかなと」

――今後、Aマッソが目指す方向は?

「やっぱり自分たちの冠番組がやりたいですし、コンビで全国ツアー回れるレベルまで行きたいですね。今は東京、大阪ぐらいがAマッソの知名度の限界なので、5都市とか回れるくらいお客さんを入れられるようになりたいです。あとは、『自分たちよりやりたいことをできている人』がいないように、といつも思っています。漫才一筋、コント一筋とかじゃなくて、『次何するんやろ』って常に思われていたいです」

――そんな加納さんから見て、やりたいことができている人は?

「加藤シゲアキさんとかは多才やし、『やろうと思えばどんな表現でもできる』って人なのかなって。それ以外に好きなことをやっているのは、天竺鼠の川原さん、ジャルジャルさんとかかな。テレビだけを見ている人たちではないですよね」

――最後に、「小説新潮」での新連載への意気込みをお願いします。

「連載を誌面に載せる以上、毎月本屋に雑誌を買いに行っていただければ。本屋に行く口実を私が作れるならこんなに嬉しいことはないですね」

加納愛子
1989年、大阪府生まれ。2010年に幼馴染の村上愛とお笑いコンビ「Aマッソ」を結成。昨年11月、初となる著作『イルカも泳ぐわい。』を刊行。新連載エッセイ「行儀は悪いが天気は良い」が「小説新潮」8月号よりスタート。

2021年7月27日掲載

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