事件現場清掃人は見た 家族を捨て孤独死した「80代父親」を娘は最後になぜ許したのか

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介護で父親を許せるように

「色んな過去を背負って生きている高齢者たちの介護をしていくうちに、だんだんと父親のことが許せるようになっていったそうです。介護する男性が父親と重なって見えたといいます。彼女は父親も色々と苦労したんだろうなと考え、男性が亡くなる1年前、初めて彼を訪ねているのです」

 娘は、小4の時に父親が夜逃げして以来、40数年ぶりの再会となった。父親のアパートの近くの料理店で2人で食事をした。

「父親は、娘が訪ねてきてくれたことで、たいそう喜んだといいます。父親は、妻と娘を置いて逃げたことを涙ながらに謝ったそうです」

 2人で、尽きぬ話をしたという。

「それ以後、3カ月に1度の割合で、娘さんは父親と会うようになりました。男性が亡くなるまで、4回会ったそうです」

 高江洲氏は、ひと通り話を聞くと、特殊清掃の見積もりを出した。

「風呂は解体して全て交換する必要がありました。そのため、見積もりは数百万円になりました。娘さんは、子どもの進学のために預金をしていたので、その中から支払うと言っていました。私の経験では、普通、いくら肉親でも家族を捨てた人のためにそんな高額なお金を払う人はまずいません。私は、娘さんに深い感銘を受けました。生活保護を受け、惨めな晩年を過ごした父親にとって、わずか1年という短い期間でしたが、娘さんと会えたのは唯一の救いだったのではないでしょうか。娘さんに死後の始末もしてもらい、安心して旅立ったことでしょう」

デイリー新潮取材班

2021年7月27日掲載

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