群馬県前橋に初の「億ション」が誕生 不動産専門家は「誰が買うのか」

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「ニッポン最後の秘境」こと「グンマ県」を舞台に群馬県に対する屈折した郷土愛を描くのは、人気漫画『お前はまだグンマを知らない』(新潮社刊)である。その県都・前橋の駅前にタワーマンションが建つことになった。名前は「ブリリアタワー前橋」。一番高い部屋は“億超え”になるという。

 建設予定地は、JR両毛線「前橋駅」の北口から徒歩2分、駐車場として用いられていた約3870平方メートルの土地である。湘南新宿ラインに乗れば、2時間かかるが乗り換えなしで都心にたどり着く。

 このタワマンの販売担当者が言う。

「マンションは地上27階で、高さ約94メートル。最多価格帯は3千万円~4千万円台ですが、最上階と26階の約124平方メートルのお部屋が、いわゆる億ションになります。内装は特別なものを用意しており、眺望はもちろん最高です」

 たしかに、予定地の周りは、遮るものがなく、見方を変えれば「ポツンとタワマン」みたいな風情なのだが、前橋で億ションは「初」なのだという。

 地元の不動産業者が言う。

「以前は湘南新宿ラインの沿線で、億ションが建てられるのは大宮(さいたま市)が北限といわれていました。前橋は県庁があるけど、高崎より不便だし、予定地は紆余曲折を経てきただけに、感慨深いものがあります」

 このタワマン、もともとは前橋市が入っての再開発事業によって計画されたものだが、最初に手を挙げた大京が「事業化は困難」と撤退。予定されていた老人ホームも名乗り出る業者がいなかった。大手不動産会社・東京建物と東京都内のファーストコーポレーションが計画を引き継いだのは2019年のこと。

 先の販売担当者によると、竣工・引き渡しは2024年になるというが、心配そうな顔をするのは不動産コンサルタントの森島義博氏である。

「不動産会社はマンションを建てる際に“想定購入者”というリストを作ります。どんな客が、どの部屋にいくら払ってくれるのか、を予測しておくのです。しかし、ブリリアタワー前橋の億ションは坪270万円。新幹線が走っているわけでもないし、誰が買うのか、ちょっと想像がつきません」

 ちなみに、お隣の高崎市の駅前には「ブリリアタワー高崎アルファレジデンシア」があって、こちらは坪250万円と僅差。新幹線は譲ってもマンション価格は負けられない。前橋のタワマンは「県都」のプライドもかかっている。

週刊新潮 2021年7月22日号掲載

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