桐生はアミューズ、錦織と大坂はIMG…アスリートが芸能プロにマネージメントを任せる理由
東京オリンピック開幕。芸能プロダクションは蚊帳の外と思いきやそうではない。代表選手が所属する芸能プロもあるからだ。なぜ、アスリートは芸能プロにマネージメントを任せるのか。そのメリットとは?
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アスリートのマネージメントを手掛ける芸能プロの草分けはホリプロ。1991年、社内に文化部(現スポーツ文化事業部)を設け、ヴェルディ川崎に所属していた武田修宏(54)らとマネージメント契約を結んだ。
アスリート側にもホリプロ側にもメリットがあった。当時、アスリートがテレビ出演する際のギャラは不当と言えるほど安かったが、これが改善に向かったからである。もちろんホリプロにも所定のマネージメント料が入るようになった。
1980年代までのアスリートのギャラがどの程度だったかというと、「だいたいタレントの10分の1から5分の1程度」(民放OB)だった。なぜ、そんなに安かったかというと、そもそも民放側にアスリートにもタレント並みのギャラを支払わなくてはならないという意識がなかったからだ。
背景には新聞がノーギャラだったことがある。新聞記者は取材謝礼を1円も払わなかった。「アスリートが新聞に登場するのはファンサービスの一環」という考え方からだった。民放もその意識を共有したが、さすがに一定のギャラは支払った。「スポーツマンランク」などと呼ばれた相場に沿った低い金額だった。
その常識に変化が生じ始めたのはホリプロに文化部が誕生したころから。アスリートには勝手が分からないギャラ交渉を代行した。各番組への貢献度を考えると、アスリートというだけでギャラを抑えられるのは間尺に合わない話だったのだ。
取材の選別というメリット
ほかにもアスリート側にはマネージメントをしてもらうことによるメリットがあった。週刊誌など普段はアスリートと密に付き合っていないメディアの取材窓口を芸能プロが引き受けるようになったからだ。
例えばアスリートがJリーガーだった場合、取材を受けるべきかどうかの判断を球団が下すのは難しい。アスリートの数が多いから、その取材が本人にとってプラスになる取材かどうかを判断する時間がない。球団はサッカー専門誌以外、雑誌のカラーも把握していない。
断るのは簡単だが、本人にとってプラスになる取材かも知れない。球団は迷う。その点、芸能プロなら取材申し込みの選別はお手のものだし、雑誌の性質も知り尽くしている。
もっと大きいのが、芸能プロがCM契約の交渉を代行してくれること。金額は大きいし、期間や禁止事項などの条件が複雑なので、CM契約は本人が自分でやるのは難しい。金額の相場も分からない。その点、芸能プロならCM契約にも慣れている。売り込みもしてくれる。
五輪競技のアスリートの場合、1988年のソウル五輪からプロの出場が認められるようになったため、金メダリストの価値がより高まった。五輪で世界一が決まるようになったからだ。
金メダリストは人気も好感度も高く、なによりファン層が広いので、企業にとって垂涎の的なのである。
では、芸能プロの秘蔵っ子である五輪出場選手の一部をご紹介したい。
芸能プロ所属の五輪出場選手たち
■ホリプロ
・植草歩(28)。出場予定種目、空手女子組手61キロ超級。武器は中段突き。全日本選手権女子組手で2015から2018年に史上初の4連覇を達成。2018年、アジア大会68キロ超級金メダル。
小学3年生で空手を始めてから、僅か2年で全国大会の3位に入賞した天才肌。愛称が「空手界のきゃりーぱみゅぱみゅ」というところがホリプロらしい。
所属はJAL。これはマネージメントをホリプロが行うものの、JALのサポートを受けるという意味。非公式戦などでは右胸に「JAL」のマークの入った空手着を着用している。
・小池祐貴(26)。出場予定種目、陸上男子100メートルと400メートルリレー。自己ベストは100メートルが9秒98、200メートルが20秒23。今年6月の日本選手権の200メートルで初優勝し、この代表にも内定したが、リレーに出場するため、辞退した。
2018年、アジア大会男子200メートル1位。2019年、日本選手権男子100メートル3位。同年、日本選手権男子200メートル2位。所属は住友電工。
100メートルで日本人初のメダリストとなったら、CMの依頼が殺到するのは間違いない。
・新城幸也(36)。出場予定種目、自転車男子ロードレース。ロンドン、リオに続き3度目の五輪。2011年、アジア選手権個人ロード金メダル。2013年、全日本選手権ロード優勝。2016年、アジア選手権個人ロード銀メダル。ツール・ド・フランスに7回出場し、敢闘賞を2度獲得した。
日本のサイクルロードレース界のカリスマ。所属はバーレーンのロードレースチームであるバーレーン・ヴィクトリアスである。
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