薄毛・抜け毛の最新治療とは コロナ後遺症で脱毛が多発、白髪染めの注意点とは

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恐ろしい「かぶれ」

 ところで、毛髪を作物に例えるならば“土壌”は頭皮に他ならない。人目に触れる部分ゆえ、若々しさを保とうと「毛染め」を施している人も多いだろう。

 松倉クリニック表参道の田路めぐみ医師によれば、

「いわゆる『おしゃれ染め』と白髪染めの染毛剤とでは、成分のブレンドが異なります。おしゃれ用の一般的なヘアカラーは黒髪の多い状態で使うため、黒色を淡くするブリーチをメインにした、明るい色になる中程度の染毛力のものが多いです。一方、白髪染め用は染毛力が強めで、色も濃いものが主流。白髪染めで淡い髪色に仕上げるタイプは、黒髪と白髪との色の差を縮めるため、ブリーチ剤も入っています」

 とのこと。毛髪診断士でヘアケアスペシャリストの余慶尚美氏が言う。

「ヘアカラーリングには、大きく分けてヘアマニキュアとヘアカラーの2種類があります。ヘアマニキュアは、髪の表面に染料を付着させるカラー剤で、髪や頭皮へのダメージは少ないものの色落ちしやすい。一方でヘアカラーは髪の内部で色素と結合するため、色持ちがよいのが特徴。ただ、染料によるアレルギー反応が見られる方もまれにいらっしゃいます」

 毛染めが原因で頭皮がかぶれれば、むろん育毛にも悪影響を及ぼす。恐ろしいのは、市販のヘアカラー剤は通常、あらゆる質の髪を染められるよう薬剤が強めに配合されている点だ。前出の齊藤院長も、

「かぶれの症状としては、かゆみや赤い発疹が、頭皮以外にも耳の後ろや顔、首の周囲など、使用中に染毛剤が付着した部分に現れます。原因は染毛剤に含まれる酸化染料だと考えられており、例えばパラフェニレンジアミン(ジアミン)、メタアミノフェノール、パラアミノフェノールなどの物質が挙げられます。これらがアレルゲン(アレルギーの原因物質)となり、体内の免疫系がそれを異物と認識して反応することで、かぶれが生じるのです」

 その発症のタイミングは、

「体質やアレルゲンとの相性で決まるため一概には言えませんが、使用頻度が高いほどかぶれが生じる可能性は高まります。毛染めをいったん止め、かぶれが治まったら再開しようとする人も多いのですが、楽観視は禁物。体内の免疫機能は、ひとたび異物と認識したものを覚えているからです。そんな状況で同じ染毛剤を再び使うと、顔が膨れ上がったり水ぶくれができて体液が滲み出したりと、重症化してしまいかねません」

 かぶれが生じた時点で、その染毛剤は二度と使えないと思わなくてはいけない。

必ずパッチテストを

クレアージュ東京エイジングケアクリニックの浜中聡子院長は、

「カラーリングや毛染めは定期的に繰り返さざるを得ないものです。もし頭皮への負担や髪の傷みが気になる場合は、その負担をなるべく軽減するよう、ジアミンの入っていない毛染めを選ぶのも一案でしょう。染まりのよいものは、どうしても負担が大きくなりやすいのが実情です。いずれにせよ、できれば美容院や毛染めの専門店で染めることをお勧めします」

 そうアドバイスする。家庭で行うと、毛髪だけでなく頭皮にも染毛剤が付着してしまいがちで、かぶれを引き起こすリスクがおのずと高くなるためである。

 先の田路医師は、

「月1回程度、染めるのが通常でしょう。ブリーチやカラー剤自体に触れると刺激となるため、うまく染まらずやり直す場合でも1週間は間をあけましょう」

 としながら、

「ヘナなどの天然由来成分の染毛料では“かぶれない”といった記載を見かけることがありますが、化学成分であれ自然成分であれ、接触皮膚炎やアレルギーは起こり得ます。ヘナ染め特有の赤みを抑えるために加えるインディゴ(藍色染料)でかぶれる人が多いともいわれており、基本的には、しっかりパッチテスト(皮膚アレルギー試験)を行うことです。これで広範囲のかぶれを回避することができます」

 日本ヘアカラー工業会のホームページでは、使用する48時間前に少量を腕の内側に塗り、30分後と48時間後の様子をそれぞれ観察するよう求めている。自宅でできる簡単なテストであり、かゆみや刺激などの異常を感じた場合には直ちに使用不可となる。おしゃれはまず、安全を担保して始まるというわけだ。

週刊新潮 2021年7月22日号掲載

特集「女と男の『薄毛・抜け毛』対策 最大の原因は遺伝? 双子の追跡調査」 第3回」より

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