フランス人男性が「子の連れ去り」被害を訴えハンスト中 日仏首脳会談でマクロン大統領が議題に

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フランスでは連日ニュースに

 日本でこのような「連れ去り」が多発している要因として挙げられるのが、離婚後の単独親権制度だ。一方、共同親権が一般的な欧米などの先進諸国は、日本に対し「連れ去りは子供への重大な虐待」と批判してきた。20年7月に欧州議会は、日本人の親が日本国内で子供を一方的に連れ去り、別れた相手に面会させないことを禁じる措置を迅速に講じるよう、日本政府に要請する決議案を採択している。

 ヴィンセントさんは2年前に、母国フランスのマクロン大統領が来日した際に面会し、支援を訴えている。「あの時、大統領は『善処する』と約束した」。しかし、状況は何も変わっていない。五輪開会式出席のため来日するマクロン大統領に再会し、直訴したい。そんな思いのもと、彼はこの2週間、ハンストを続けてきた。

 ヨーロッパ在住のジャーナリスト・栗田路子氏によれば、フランスでは彼の行動は連日大きく報じられているという。

「『ル・フィガロ』『ル・モンド』などの大手紙を始め、国営放送のニュース番組でも特集が組まれており、広く市民に共感されています。フランスのみならず欧州圏では、どんなにいがみあって別れても、子供の最善のために協力して育てる『共同親権』が広く実行されているので、みな信じられないといった思いです。24日、マクロン大統領が菅首相との首脳会談でこの問題を取り上げることも大統領府から発表されており、大きな関心が寄せられています」

マクロンは来たのか……

 マクロン大統領が来日した23日の午後2時過ぎ、突如、大統領顧問とフランス大使がヴィンセントさんの前に現れ、現場には緊張が走った。マクロンがやってくるのではないかーー。だが、彼らは大統領の代理として訪れただけだった。この時ばかりはヴィンセントさんは体を振り絞るように立ち上がり、フランスから日本に外圧をかけ、この状況を打開してほしいと訴えた。翌24日昼、日仏首脳会談が開かれ、マクロン大統領は菅首相に対策を講じるよう要望したとみられるが、千駄ヶ谷駅前に現れることはなかった。

 ヴィンセントさんはこう訴える。

「マクロンがここに来ることが重要だったわけではない。それなら2年前と変わらない。僕が要求しているのは、子供たちと会わせてくれること。そのために、母国がちゃんと動いてくれること。それが確約されるまで、僕は続けます。死んでも構わない。二人の子供たちはパパに会いたがっている。彼らのためにも戦い続けます」

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