性犯罪の加害者更生を支援する団体代表が逮捕 被害者と結んでいた奴隷契約書の中身
アプリで知り合った20代女性
性犯罪は再犯率が高く、その防止に向けた加害者の更生支援をうたう団体というものが存在する。その目的自体には社会的意義もあるのだろう。が、こともあろうに当該団体の代表が、女性に性的暴行を加えた容疑で逮捕された。いったいどういうことなのか。余罪もあるとされ、被害者と結んでいた奴隷契約書も存在するというこの事件についてレポートする。
***
逮捕されたのは、性犯罪の再犯防止に向けた加害者の更生支援をうたう一般社団法人「さなぎの樹」(大阪市北区)の代表・松本学容疑者(48)。
ホームページには、〈性犯罪は比較的依存性が高い行動で、多くの加害者が再犯を繰り返している現実があります。そして、性犯罪の場合は、ひとたび再犯が起きると、必ずといっていいほど被害者が出るという深刻な問題がございます。わたし達は,性犯罪を繰り返す人々に、当事者主体のプログラムを提供し、彼らが自身の力で再加害を防止できるように支援してまいります〉とうたわれている。
取材する記者によると、
「7月8日、大阪府内の建物の部屋の中で、マッチングアプリで知り合った20代の女性を脅して性的暴行を加えた疑いがもたれています。このアプリは、特に肉体関係を結びたい人たちの割合が多いとされています。松本容疑者は、“合意の上だった”などと供述し、容疑を否認しています」
松本容疑者は、そのアプリでは「うずしお先生」と名乗っていたという。
“援助交際に関しては300万円を支払う”という提案
この記者が続ける。
「女性とメッセージをやり取りする中で、“援助交際に関しては300万円を支払う”という提案をしていたのに実際には6万円しか支払われず、怒った女性が警察に駆け込み、コトが露見したといいます。松本容疑者はやり取りの際に、女性の運転免許証や自撮りの裸写真などを送らせ、それを公開するぞと脅迫したうえで、性的暴行を加えたと見られています」
さらに、女性とは「誓約書」を交わし、署名・捺印させて容疑者に返信させていた。内容を全文紹介するのはいささかはばかられるが、少し引用しておくと、
〈先生のご命令、ご指示には完全服従し、拒否したり不服を申し立てたりすることはいたしません。先生が身も心も満足して頂けるように、心からご奉仕し、恭順を示し続けることをお約束いたします〉
〈私の身体と心は、既に先生の所有物です〉
などといったもので、自身を先生と呼ばせ、女性を奴隷扱いするような文言が連ねられている。なぜ全文紹介がはばかられるかと言えば、それ以外のところの文章はほとんどセクシービデオか官能小説のような文言が並んでいるからだ。
「女性の方から望んで行為に及んでおり、松本容疑者からの強要や強制は一切ないことを誓約する中身で、これにサインしていたことを前提に、“合意だった”と主張しているようです。被害者に対し、事前にそのような内容の文書に署名・捺印させて性的暴行などの犯罪に及ぶケースが少し前にもありました」
同法人のホームページには、〈合意とは,性的活動をすることに対して,圧力や不安を与えず,自由に行われたものです〉といった記述も確認できる。しかし松本容疑者が女性に結ばせたとされる誓約書から「自由」という印象は受けられないだろう。むしろ「圧力や不安」ばかりが満ちている。この契約書をもとに合意があったと主張するのは、一般的には理解されづらいのではないか。
「密室での行為をめぐっては、合意か否かがしばしば争点になります。そこから、合意というファクトさえあれば、そこに至る経緯とは関係なく免罪符になりえるという歪んだ考え方になってしまった可能性も否定できません」
警察には「うずしお先生」を名乗る男による似たような被害が、一昨年から今年にかけて6件寄せられているという。