酒類取引停止発言のウラに西村大臣の焦り 菅総理の相談相手は小泉大臣という悪い冗談

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西村大臣の暴走ではない

「緊急事態宣言の効果を上げる手を打て、という菅義偉総理の指示が背景にあったのは間違いありません」

 首相官邸の幹部官僚はこう言葉少なに語る。西村康稔経済再生担当相が、酒類提供停止に応じない飲食店に対して金融機関から要請させたり、酒類販売業者に取引停止を求めたりするという政府の考えを明らかにして世間を騒がせた発言は、決して西村大臣による暴走ではなかったというのである。大手紙のデスクが経緯を説明する。

「西村大臣は7月8日の記者会見で、金融機関へ要請する考えを明らかにしましたが、世論の猛烈な反発を浴びると、すぐさま発言を取り消して陳謝しました。加藤勝信官房長官も西村大臣に注意したと語り、あたかも西村大臣のフライングだったかのように装っています。一方、酒販店への取引停止要請はなかなか撤回しませんでしたが、自民党内からも批判の声が上がったこともあり、これも撤回せざるを得なくなりました」

 ネット上では、「時短要請などに応じない飲食店を動かすために、融資をしている金融機関に圧力をかけるのは、独禁法が禁じる優越的地位の乱用に当たるのではないか」「法的根拠がないのに政府がそこまで高圧的に命令できるのか」といった非難の声が上がった。何にせよ、繰り返される緊急事態宣言で、経営的に苦境に立たされている飲食店の神経を逆撫でしたのは間違いない。

金融機関を監督するすべての省庁

 だが、この「要請」は西村大臣の単なる思い付きではなく、内閣官房が発案し、霞が関を上げて準備を進めていたことが次第に明らかになっていく。

「国民民主党の山尾志桜里議員が役所に折衝して関係文書を出させたのですが、7月8日付で『内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長』が出した事務連絡の宛先は、金融機関を監督するすべての省庁宛で、金融庁だけでなく財務省や経済産業省、農林水産省も含まれていました。文書を出すまでには、当然省庁間で調整をしますから、これでかなり早い段階から根回しがされていたことが明らかになったのです。酒販店の組合宛の文書も、対策推進室と国税庁酒税課の連名になっていましたから、内閣官房が音頭をとって官僚機構全体で準備していたことが分かってきました」(前出の大手紙デスク)

 その後、酒販業者への「指導」は、6月からすでに行われていたことも判明した。

「西村大臣は何とか緊急事態宣言の実効性を上げようと対策推進室のスタッフ官僚たちに、他にできることはないか考えるようにと指示していました。最近、総理は西村氏にキツく当たっていて、西村大臣もそれに何とか応えようとしていたのでしょう」(同)

 コロナ対策を取材するジャーナリストも、「西村さんはコロナ対策が後手後手に回っていると批判され、相当焦っていました」と語る。

「実は最近、総理は何でも小泉進次郎氏に“相談”をしているのです。同じ神奈川選出の国会議員ということもあるのでしょうが、昨年の総裁選では河野太郎氏が出馬を断念して早々、進次郎はすぐさま菅支持を表明したので、信用が置けるということなのでしょう。サミットで環境問題、とりわけ国内の原発問題などについて相談した後からより“結びつき”が強くなり、今は政府がどう情報を発信していくべきか、国民とのコミュニケーションはどのようにとるべきかなど、広報的なことまで含め話し合っているようです。

 もっとも、国民の反発を招くばかりのコロナ対応で、総理は加藤官房長官とも田村憲久厚生労働大臣とも関係が悪化しており、総理は本来相談すべき相手とコミュニケーション不全に陥っています。西村大臣も不遇をかこっていて、金融機関への要請や酒類販売業者に取引停止を求めたのは、何とか得点を稼がねばと思ったのではないでしょうか」

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