熱海土石流、遺族も恐れる「盛り土」の所有者を初直撃 「警察を呼ぶぞ、警察を!」
「妹の無念を晴らしたい」
7月3日に静岡県熱海市を襲った土石流災害から2週間が経つ。死者18名、行方不明者12名を含む多大な被害を生んだ原因は、逢初川上流の盛り土であることが明らかになりつつある。急な斜面に産廃を含む土砂が遺棄され、この度の大雨で一気に崩壊したのだ。つまり、「人災」の疑いが濃厚なのだが、盛り土に関与する人物らは逃げの一手で、責任の所在は定まっていない。今回、週刊新潮は雲隠れを続けていた盛り土の所有者を初直撃することに成功した。
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目下、“犯人”とされるのは、盛り土を「作った男」と「放置した現所有者」の2名。盛り土を作ったのは、天野二三男(ふみお)氏(71)という不動産管理会社など複数の法人の役員に就く実業家だ。2006年に宅地造成を名目に今回の現場周辺の土地造成を始めたが、結局は産廃を含む残土置き場にしてしまったのだ。
一方、盛り土を放置した現所有者は麦島善光氏(85)。崩落現場の伊豆山一帯の山林を所有する「ZENホールディングス」の実質的なオーナーで、県内の寺院やリゾート施設を買いあさる一方、過去には脱税で実刑判決を受けたこともある人物だ。
遺族をはじめとする地元住民への謝罪はおろか、会見も開かずマスコミからも逃げ回る両名に対し、土石流災害被害者の遺族らからは怒りの声が上がっている。土石流によって帰らぬ人となった草柳笑子さん(82)の息子・孝幸さん(49)は、
「盛り土の業者には怒りしかないし、責任を追及できるものならしたい。お金とかじゃなくて、せめて謝罪してほしいけど、きっと自分たちが頑張ったところで、裁いてもらうことはできないだろう。どうせもみ消されるのが関の山という気持ちです」
と無力感を露わにする。その理由は、天野氏がこれまで熱海の土地開発を巡って住民と再三トラブルを起こしてきたにもかかわらず、行政が悪行を止めることはなかったからだ。土砂の直撃を受けて亡くなった田中路子さん(70)の兄である出野与四男さん(82)は、
「言ってしまえば、信じられないくらいタチが悪い連中ですよ。うちは両親が早逝したので、今回の土石流で亡くなった路子は妹というよりも、自分が育てた娘のような存在だった。私は今年83歳になりますが、残りの人生は彼女にもらったものだと思って、頑張って生きようと思います。そして、生きている間に路子の無念を晴らしてやりたい」
当事者である麦島氏を直撃すると、「なんだ君は。話すことはない!」と声を荒らげ、死者、行方不明者が多数であることについて質すと、
「そんなのは(弁護士に)言っとるよ。警察を呼ぶぞ、警察を!」
と眼光鋭く威嚇し、謝罪や反省の言葉が語られることはなかった。7月21日発売の週刊新潮では、彼ら2人の刑事責任を追及できる可能性などと併せて詳報する。