禁錮7年求刑の飯塚幸三被告 メダリスト・内柴正人氏と同じ“勲章没収”の屈辱

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Twitterのデマ

 SNSに詳しいライターが言う。

「飯塚被告に対する求刑が軽いという指摘は、Twitter上でも議論を呼びました。『軽すぎる』と憤るツイートは相当な数に達しましたが、『7年は自動車運転処罰法違反の上限であるのも事実』と理解を示す投稿も拮抗していたと思います。ちなみに前田氏は7年が上限であることは認めつつ、『禁錮ではなく、懲役を求刑すべきだった』と指摘しています」

 前田氏は懲役刑を求刑すべきとした理由の1つとして、「刑期を問わず勲章も必ず剥奪される」ことを挙げた。

 実は飯塚被告には勲章が授与されており、それがネット上の議論に大きな影響を与えているのだ。議論の過熱もあり、Twitterでは勲章に関するデマ情報も拡散した。

「『検察側が懲役刑ではなく禁固刑を求刑したのは、飯塚被告の勲章が剥奪されないよう配慮したため』というツイートが拡散しました。これは完全なデマです。明治時代に制定された『勲章褫奪例(くんしょうちだつれい)』には、『死刑、懲役又ハ無期若ハ三年以上ノ禁錮』が確定した場合は勲章を剥奪すると明記してあります。求刑の禁錮7年が最高裁で確定すれば、勲章は剥奪されます」(同・記者)

最初に動くのは検察庁

 2015年11月、新聞各紙は「秋の叙勲」に関する記事を掲載した。その「瑞宝重光章」受賞者リストに《飯塚幸三(元工業技術院長)84》と記載されているのが分かる。

「叙勲には『旭日章』と『瑞宝章』があります。前者は政治家や民間人、後者は公務員が対象です。例えば『旭日大綬章』は元大臣などが対象で、天皇陛下が授与されます。『瑞宝章』は上位の『瑞宝大綬章』があり、その下が『瑞宝重光章』です。飯塚被告に授与された『瑞宝重光章』のリストを見ると、対象者は各省庁の次官、高裁の判事や検事、大使などの経験者だと分かります」(同・記者)

 内閣府の賞勲局に取材を依頼し、どういう手順で、勲章の剥奪=褫奪(ちだつ)が行われるのか訊いた。

「刑事被告人に叙勲されたことがあるかどうかは、検察庁が把握します。有罪判決が確定し、褫奪に必要な条件が満たされると、判決謄本などが送られてきます。我々も目を通し、間違いがなければ、官報に掲載します。こちらの作業は特に難しいことはありません。それより大変なのは、勲章を没収する作業のほうです」

 一体、誰が没収するのかと言えば、実は特に決まりがないのだという。そもそも剥奪自体が非常に珍しいからだ。

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