韓国選手団の反日横断幕と「旭日旗の使用不可をIOCは約束」主張の暴挙

国際 韓国・北朝鮮

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韓国国会決議を五輪村で蒸し返し

 五輪選手村入りした韓国選手団が、3フロアにわたってベランダの壁面に巨大な韓国国旗「太極旗」と「臣にはまだ5000万国民の応援と指示が残っております」と書かれた横断幕を掲げていた問題で、国際オリンピック委員会(IOC)は17日、これを撤去するよう要請し、韓国選手団はこれに応じて横断幕を下ろしたと発表した。しかし、この騒動はそう簡単に収まりそうもない。在韓ライター・羽田真代氏のレポート。

 横断幕に記されていた「臣にはまだ5000万国民の応援と指示が残っております」との文言は、文禄・慶長の役で豊臣秀吉と対峙し、朝鮮の海を守った李舜臣(イ・スンシン)将軍の有名な言葉を引用したもので、元の文言は学校教育を受けた韓国人なら誰もが知っている。

 この横断幕についてIOCは、政治的、宗教的、人種的な宣伝活動を禁じる五輪憲章違反だと指摘したわけだが、これに対して大韓体育会(日本のJOCに相当)は、「旭日旗についても同じ五輪憲章違反の解釈を適用することをIOCは約束した」と説明した。もちろん組織委員会は、「旭日旗は国内で広く使用されており、政治的主張にならない」と、これまで日本政府が訴えてきた内容を冷静に繰り返している。

 旭日旗をめぐっては、韓国国会が19年、「五輪の際の旭日旗持ち込み禁止措置」を求める決議を採択している。この決議は、旭日旗をカギ十字と類似するものと決めつけ、「日本の帝国主義と軍国主義の象徴」だと訴え、五輪競技場内での使用禁止措置をIOCなどに求めるものだ。韓国国会の主張が大韓体育会を通じて蒸し返されたことになる。

「大韓体育会」の正体

 李舜臣は韓国民が誇る英雄で、ソウルのど真ん中にある光化門の前には彼の巨大な銅像が鎮座している。現在の100ウォン(約9.7円)のモデルにもなっており、また、1973年から流通していた500ウォン札(現在の価値で約48円)にも彼の肖像と亀甲船、顕忠祠(ヒョンチュンサ)という彼を祀る寺がデザインされていた。

 彼の肖像画は国際的なスポーツ大会で使用されることも多く、2013年7月に行われた東アジアカップの日本対韓国の試合の際や、2019年6月に釜山で行われた韓国対豪州の親善試合に安重根(アン・ジュングン)の肖像と共に掲げられた。2013年の試合では「歴史を忘れた民族に未来はない」という横断幕が横に並び、物議を醸した。

 韓国側が今回、李舜臣の言葉を引用した横断幕を選手村に掲げたことは、これまで繰り返されてきたようにスポーツを政治利用した行為と言えよう。大韓体育会関係者は韓国メディアの取材に「今大会は日本で開催するだけに、特別なメッセージを準備した」「選手たちの戦意を高められるような応援文句を探していたが、ある職員の提案で当該の横断幕を準備した」と述べている。

 1920年に設立された大韓体育会は1938年、朝鮮総督府により強制解散。日本は1942年に管制朝鮮体育振興会と朝鮮学校体育振興会を結成・発足させ、韓国が独立するまで体育を統制した。

 細かな説明は割愛するが、この団体の根底には、 “韓国は日本に侵略”され、“日本によって韓国のスポーツは衰退させられた”という意識がある。したがって、この団体にとって国際スポーツの場は“日本によって衰退させられた韓国のスポーツの地位を取り戻す場”であり、“貶めた日本には絶対に勝利しなければならない場”となっている。

「親日行動をしろと言うのか?」

 日本国内では「IOCは韓国に対し厳しい処罰を科すべきだ」「明らかに五輪憲章に違反する行為」「確信犯だ」と批判の声が上がっているが、その一方で韓国内からは、「旭日旗を掲げているやつらが何を抜かすのか」「反日の何が悪いのか? お前らは旭日旗で服まで作っているが、我々は小さな横断幕を掲げただけだ」「竹島を日本領だという嘘を言いふらすことの方が悪質だ」「反日行動が駄目なら、親日行動をしろと言うのか?」などといったコメントが並んでいる。

 結局、横断幕は撤去されたわけだが、この騒動がより一層、韓国選手団の闘争心をかきたてるのには役立ったのだろう。また、どこかで旭日旗が映り込んだりすればそれもまた火種となりそうだ。

羽田真代(はだ・まよ)
同志社大学卒業後、日本企業にて4年間勤務。2014年に単身韓国・ソウルに渡り、日本と韓国の情勢について研究。韓国企業で勤務する傍ら、執筆活動を行っている。

デイリー新潮取材班編集

2021年7月20日掲載

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