小山田圭吾の「いじめ自慢」、世界に誤解を与える五輪組織委の対応に音楽業界の危機感

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「クイック・ジャパン」に取材を申し込むと…

 一方、小山田がインタビューでイジメを明かした2誌のうち、「ロッキン・オン・ジャパン」の山崎洋一郎編集長は7月18日、同誌の公式サイト内で全面的に謝罪した。

「その時のインタビュアーは私であり編集長も担当しておりました。そこでのインタビュアーとしての姿勢、それを掲載した編集長としての判断、その全ては、いじめという問題に対しての倫理観や真摯さに欠ける間違った行為であると思います」(山崎編集長の謝罪文より)

 山崎氏のインタビューに対し、小山田は障がいがあった小学校の同級生をガムテープで縛り、段ボールに入れたなどと笑いながら明かしていた。同じ同級生には排泄物を食べさせたり、女子生徒の前で性器を出させたりもしたという。

 片や「クイック・ジャパン」では中学の修学旅行時、留年した先輩とやはり障がいのある生徒に自慰行為をさせたと語っている。また、同誌の編集者は被害者生徒と小山田の対談を計画し、相手の都合も尋ねずに自宅まで訪ねた。その際、被害者の母親は本人が自死を考えていたことを明かしている。

 同誌を発行する太田出版は同16日、デイリー新潮の電話取材の申し込みに対し「来ると思った」としながら、「リモート(勤務)だから」として対応しなかった。ちなみに同社は神戸連続児童殺傷事件の加害者男性が書いた『絶歌』(2015年)の出版元として知られる。

 小山田の母校関係者の間では戸惑いが広がっている。同校要職者はデイリー新潮の取材に対し、「事実関係を調べ、対処しなくてはならないと思います」「どうやら小山田さんは学園の運営に不満を抱いていたようなんですよ」と語っていたが、本来は教育関係者の間で評判高い学校なのだ。

 特徴は自由な校風。小中高の一貫校でずっと制服がなく、校則も緩やか。それでいて高校卒業時には早慶などの難関大に合格者を出す。

 障がいのある生徒を受け入れ、それにより健常者の生徒が弱者の立場になってものを考えられる力を育ませている。障がいのある生徒には民主的な能力などの発達をうながしている。ただし、小山田は履き違えたようだ。

 知的障がいのある人の人権を守るため、その親たちでつくっている一般社団法人「全国手をつなぐ育成会連合会」は同18日、声明を出した。開会式が迫っているため、小山田の辞任こそ求めていないが、極めて厳しい内容だった。

「イジメというよりは虐待、あるいは暴行と呼ぶべき所業です」

「しかも、そのターゲットが反撃される可能性が少ない障がいのあるクラスメイトだったことも考え合わせると、小山田氏の行為には強く抗議するものです」

 留任させた組織委が公式説明を出していないことにも疑問を呈している。また、この件で五輪とパラリンピックを楽しめなくなった障がいのある人、家族が多数いると明かした。

 英有力紙「ガーディアン」(電子版)や同「デイリー・テレグラフ」(電子版)はこの件を冷ややかに報じた。フランス高級紙「フィガロ」も。

 小山田と組織委の対応によって、日本全体が誤解され、イジメに寛容な国と思われそうだ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮取材班編集

2021年7月19日掲載

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