失踪した五輪「ウガンダ選手」 日本で働きたくもなる“最貧国の惨状”と“偽ワクチン事件”
不法就労を希望!?
「生活が厳しいウガンダには帰らず、妻や子どものために日本で仕事がしたい」──こんな主旨の書き置きが、ホテルの部屋に残されていたという。
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大阪府泉佐野市のホテルから抜け出し、行方不明になったのは、ウガンダ代表のジュリアス・セチトレコ選手(20)。重量挙げで東京五輪に出場予定だった。
書き置きの文面は英語で綴られていた。ウガンダはイギリスの植民地だったため、第一公用語は英語だ。
7月16日の早朝、JR熊取駅の防犯カメラによく似た男性が映っていた。これまで「名古屋行き新幹線の切符を買った」と報じられていたが、テレビ朝日は17日、「新大阪駅から東京駅へ向かった」と伝えた。
ウガンダ選手団は、最初から大きな“注目”を集めていた。6月19日、成田空港に到着したが、新型コロナウイルスの感染が発覚したのだ。
セチトレコ選手は陰性だったというが、選手団は合宿先の大阪府泉佐野市に移動。23日には宿泊先でも2人目の陽性者が出ており、選手団全員が濃厚接触者の扱いとなり、宿舎待機など感染拡大を防止する措置が取られていた。
「ところが合宿がスタートすると、世界ランキングの変動で、セチトレコ選手の順位が下がって出場資格を失ってしまったのです。他の選手と一緒に東京に向かうものの、仲間は選手村に入るのに、自分だけ成田空港から帰国することが決まりました。そのショックもあったようで、ホテルに残されていた書き込みには『五輪に出場できなくなり、精神的に混乱している』というくだりもあったそうです」(担当記者)
最貧国の一つ
外国の五輪代表選手が失踪、行方不明と聞くと、ギョッとする人が大半だろう。法律に触れる行為であることは間違いないが、それでも、珍しいことではないという。
「例えば2012年に開かれたロンドンオリンピックでは、カメルーンの選手7人、コンゴの選手4人が行方不明になりました。他にもギニアやコートジボワールの選手団でも行方不明者が確認されるなど、アフリカ圏の選手が目立ちました。同じアフリカにあるエリトリアは独裁国家の圧政で知られ、選手3人は正式な政治亡命を求めました。一方、イギリスのメディアは、エリトリア以外の選手については『母国の貧困が原因だ』と報じました」(同・記者)
日本でも前例がある。少し古いが、1994年に広島市で開催された第12回アジア競技大会で“集団脱走”が発生している。
「この時は選手だけでなく、報道関係者も十数人が行方不明になりました。イランやバングラデシュの選手や関係者で、いずれも日本国内で不法就労しようとして姿をくらましたと見られたのです」(同・記者)
ウガンダの経済状態を見てみると、多くの国際機関が「世界で最も貧しい国の一つ」と判断していることが分かる。
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