裸足で五輪を獲った「アベベ・ビキラ」伝説 アフリカ選手初の金メダルの裏側(小林信也)

  • ブックマーク

“裸足の王者”アベベ・ビキラは、シューズを履いて1964年東京五輪のマラソンを走った。

 細身の褐色。やや下向きの視線。求道者のように変わらない厳しい表情。淡々と走る姿は、雪国に生まれ育った、当時小学校2年生の私には理解できない、新しい驚きに満ちていた。

 20キロ付近から独走態勢に入り、そのままゴールテープを切った。ローマ五輪に続く2連覇達成。だが、想像を超える衝撃はゴール後にあった。そのまま20メートルほど走ってフィールドに入ったアベベは、芝生の上でテンポよく整理体操を始めた。...

つづきを読む