ネット上にあふれる「キャラクターケーキ」 オーダーした客も著作権侵害に問われる可能性

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 ここ数年、ネットやSNS上で、人気キャラクターのイラストが描かれたホールケーキの画像をよく見かける。そのほとんどが個人経営のケーキ店がアップした画像で、どれも本物のキャラクター商品に見えるほどのできばえだ。

 ケーキ店が客からの注文を受けて、人気キャラクターを描いたケーキは、「オーダーメイドケーキ」や「キャラクターケーキ」として販売されている。多くの店は、堂々と「キャラクターのオーダーケーキを承ります」と宣伝しているものの、明らかにマンガやアニメなどのキャラクターとわかるものに、あえてキャラクター名を明記していないことから、違法性を意識しているようにも思われる。こうした行為は罰せられることはないのだろうか。知的財産権の法律問題に詳しい村下法律特許事務所の福田純一弁護士に聞いた。

基準は「あのキャラクターだ」

 近年、お客さんから注文を受けて、人気キャラクターを描くケーキを売りにするケーキ店を多く見かけますが、法律違反にならないのでしょうか。

「権利者の許諾がなければ、著作権侵害、つまり法律違反になることが多いでしょう。著作権侵害は、(1)対象となる著作物(この場合キャラクター)が、著作権法上保護されるかどうか、(2)著作権侵害にあたるのか、(3)著作権侵害として判断された場合でも、例外的に法律に違反しないケースに該当するかどうか、という手順で判断されます。

 まず(1)ですが、漫画などの動かないキャラクターは、その表現を「美術」の著作物として捉え、アニメやテレビ番組などの動くキャラクターは、アニメやテレビ番組そのものの表現を「映画の著作物」と捉えて、保護されます。保護されている表現の創作者や、創作者が所属する会社には、著作権と著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権等)が発生しますし、映画製作者には著作権が帰属します。

 次に(2)の侵害にあたるかですが、キャラクターを描いたケーキを作る際に、元のキャラクターを見て(依拠)、同じものを作る(複製)もしくは、本質的な特徴を変えないように作る(翻案)場合には、著作権者の持つ複製権や翻案権の侵害となりますし、これを販売すれば譲渡権の侵害となります。なお、複製の基準は実質的な同一性があるかということであり、翻案の基準となるのは、勝手につくられたものを見て、もとの作品の本質的な特徴を見てとれるかどうかです。似ているかどうかということで議論されるのは翻案なのですが、これは簡単に言うと、ケーキのキャラクターをパッと見て「あのキャラクターだ」と感じ取れるかどうかということです。

(3)の例外ですが、キャラクターなどの複製・翻案は、個人で楽しむ程度であれば『私的使用のための複製』や『利用』として認められ、著作権の侵害にはあたりません。例えば、親御さんがお子さんのためにキャラクターを真似して描いてケーキを作り、それが複製や翻案にあたっても私的使用のため違法ではありません。しかし、キャラクターケーキのオーダーを宣伝してオーダーを受けてケーキを作って納品するケーキ店は、この私的使用の範疇を越えていますので、この例外が適用されることはなく、明確な著作権の侵害になります」

『〇〇ではない』と言い逃れはできない

 それでもオーダーを受けて著名キャラクターのケーキを作る店が多いのは、なぜでしょうか。

「違法と適法の境目を知らない、つまり私的使用にあたると考えているか、バレなければ良いと思っているかの、どちらかだと思います。

 そして、販売する際にあえてキャラクター名を明記していない場合は、キャラクター名やキャラクターが登場する作品名などが特許庁に商標登録をされているものの商標権侵害を避ける意図があったり、著作権侵害を問われた際に『〇〇ではない』と言い逃れに使うことを意図しているのかもしれません。しかし、キャラクター名はなくても、広く知られたキャラクターの知名度を狙うようなキャラクターケーキは、原作の絵画やアニメなどと実質的に同一であったり、本質的特徴を感得することができるでしょうから、著作権侵害となるでしょう」

 また、こうした違法と思われるキャラクターケーキを扱う販売業者が多く出店しているショッピングモール型ECサイトなどは罪に問われないのでしょうか。

「モールの運営者もこれを放置すればプロバイダとして責任を問われることになります。ただし、法的責任を問われる可能性はあるものの、一定の条件のもとにこれを免れることが法で認められています。そのため、法に従うことに重きを置いているサイトは、これに対応する規約や仕組みを取り入れているようです。プロバイダ側は権利侵害の通報があれば、その画像を削除したり、権利侵害行為となるアップロード行為を行ったウェブサイト利用者のアカウントの利用の停止をするなどの対応をとることが多いようです」

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