児童5人死傷「トラック飲酒事故」ブラック会社は未成年社員にも飲酒させていた 「仕事終わりにドライバーも含めて酒盛り」

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 それは一台の大型トラックがもたらした悪夢だった。下校途中の小学生ふたりの命が奪われ、さらにひとりは意識不明の重体、残るふたりも重傷を負った。飲酒運転で惨劇を引き起こしたドライバー、そして、彼が勤務する問題続出のブラック会社の罪は限りなく重い。

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 事故から3日後の今月1日には、菅総理も千葉県八街(やちまた)市の現場を訪れ、献花台に花を手向けた。

 付近の住民が振り返る。

「事故を目撃した人がうちの呼び鈴を鳴らして“バーンって物凄い音がしたかと思ったら、小学生の姿が一瞬で消えた!”と。現場の市道は佐倉ICと幹線道路を繋ぐ抜け道になっていて、畑に囲まれた一本道。信号もないから車が猛スピードで飛ばすのです」

 危険運転致死傷容疑で送検された梅沢洋(60)の呼気からは、基準値を超えるアルコールが確認された。

「梅沢は現場近くにある南武運送のドライバーでした。事故当日は都内の建設現場に資材を運び、帰社する途中で事故を起こしている。道中のコンビニで買った酒を車内で飲んでいた疑いがあります」(社会部記者)

 南武運送の親会社「南武」の知念辰浩社長は、報道陣に〈アルコール検査は普段から行っていなかった。飲酒しないのが前提だった〉と話したが、

「とにかく酒についての意識が低い会社でした。現場仕事を終えて帰る際には“親方”が人数分の缶ビールを買ってきて車内で酒盛りをしていた。もちろん、運転手も含めてです」

 と語るのは南武の関係者。

「月に1回は従業員や下請け業者が集まる飲み会やバーベキューがあり、社長の親族の“会長”が顔を出すと泡盛をふるまっていた。新入社員歓迎会では、会長が“お前ら酒は飲まないのか?”と高卒の新人に未成年飲酒をさせていました。会長は業界団体の理事長も務める地元の名士。昨年には旭日双光章が叙勲されている。毎年、江戸川区の篠崎公園で開かれる会社主催の運動会には、会長と親しい具志堅用高さんも参加していましたよ」

死亡事故も

 南武運送の従業員行きつけの飲み屋の女将は、

「梅沢さんは会社の同僚と週3回は来ていたね。焼酎が大好きで、頼むのは酒と水が6:4の“ロクヨン”という濃いめの水割り。ドライバーたちは店で飲んだ後、駐車場のトラックで3~4時間だけ仮眠して帰って行くのが恒例でした」

 南武所有のトラックは「白ナンバー」で、客の荷物を有償で運ぶ「緑ナンバー」と違い、飲酒検査が義務付けられていない。だが、こんな野放図な状態では事故は避けられまい。

 南武の元従業員によれば、

「週休は日曜のみで、お盆や正月を含めても年間の休みは70日程度。朝7時過ぎから17時頃までの昼勤務が終わっても、人手が足りないと21時から夜勤に駆り出される。出勤扱いにはできないので現金で2万円を渡されていました。過酷な勤務実態のせいで、辞職する従業員も少なくなかった」

 ブラック体質が祟(たた)ってか、2014年には南武(当時は南武建設)が手がけたマンションの建設現場で死亡事故も起きている。

「江戸川区の現場で大量の鉄筋が崩れて作業員2人が亡くなった。私も同じ現場で働いていましたが、会社からは何の説明もありませんでした。ニュースで知ってゾッとしましたよ」(同)

 こんな会社の会長が叙勲とは……。事故の背景はもちろん、ブラック会社の実態にもメスを入れる必要がある。

週刊新潮 2021年7月15日号掲載

ワイド特集「サンクチュアリ」より

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