阪神ファンの苦い思い出…「歴史的V逸」を決定づけた“痛恨の試合”という黒歴史
本塁打がエンタイトル二塁打に
次は野村ヤクルトとプレーオフ寸前までもつれながら、7年ぶりVを逃した92年。最も惜しまれるのは、9月11日のヤクルト戦だ。
3対3で迎えた9回裏2死一塁、八木裕が左翼にライナー性の大飛球を放った。城友博がフェンス際でジャンプしたが、打球はその上を越えてスタンドに入った。平光清二塁塁審が「本塁打」をコール。劇的なサヨナラ2ランで阪神が勝利したかに思われた。
ところが、ヤクルト側が「ラバーに当たって跳ね上がったボールがスタンドに入った」とアピールし、協議の結果、エンタイトル二塁打に覆ってしまう。2死二、三塁で試合が再開されたが、阪神は得点できず、延長15回の末、3対3で引き分けた。
この日は7回2死一、二塁で、久慈照嘉が右中間に放ったライナーを飯田哲也に地面すれすれで好捕されるなど、押し気味に試合を進めながら、決定打を欠き、4連敗中(連敗はこの日の1分けを挟んで「9」まで伸びた)のヤクルトにひと息つかせる結果になった。
その後、阪神は10月7日のヤクルト戦で、3対1とリードの9回にまさかの逆転サヨナラ負けを喫し、同率首位に並ばれる。
この1敗もV逸に大きく影響したが、9回のピンチに緊急リリーフした湯舟敏郎はじめ、7年前の優勝を経験していないナインが平常心を失い、コチコチだったのも事実。負けるべくして負けたと言えなくもない。
「勝てるときに確実に勝っておく」という意味では、やはり、9月9日から7連勝とチームが無双状態だった時期の“負けに等しい引き分け”が、大きな禍根を残したと結論づけられるだろう。
「そらお前、まさかよ」
最後は絶対有利と思われた13ゲーム差を巨人にひっくり返された2008年。9月以降の急失速が致命的だったが、V逸につながる“幻の勝ち試合”として挙げられるのが、10月3日のヤクルト戦だ。
3回から3イニング連続得点で5対0とリードした阪神だったが、6回無失点の安藤優也を中4日で2位・巨人との天王山決戦に先発させようと、早めに降板させたことが裏目に出る。
7回に久保田智之、ウイリアムスが4失点。8回にもアッチソン、藤川球児が3失点と自慢のリリーフ陣がことごとく打たれ、「そらお前、まさかよ」(岡田彰布監督)の大逆転負けを喫した。
この結果、マジックが消滅した阪神は、10月8日の巨人戦も1対3で落とし、ついに首位陥落。そして、同10日の横浜戦、6回に村田修一の逆転3ランを浴び、3対4で敗れた瞬間、セ・リーグ史上最大ゲーム差をひっくり返されるという屈辱のV逸に泣いた。
今季の巨人とのマッチレースはまだどう転ぶかわからないが、シーズン後、「あの試合に勝っていれば……」の悔いを残すことなく、1985年以来36年ぶりの日本一を実現し、長引くコロナ禍に一筋の光明を見出す“虎の経済効果”を期待したいところだ。
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