阪神ファンの苦い思い出…「歴史的V逸」を決定づけた“痛恨の試合”という黒歴史

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 2005年以来16年ぶりのセ・リーグ制覇が期待される阪神だが、ここに来て最大8ゲーム差をつけていた巨人の猛追を受けて、尻に火がついてきた。過去にも優勝目前まで行きながら、一度ならずV逸に泣いた阪神。その中には、「あの試合に勝っていれば優勝だったのに……」と虎党を嘆息させた“痛恨の試合”も少なからずあった。

突然崩れた江夏

 まずは、残り2試合で1勝すれば優勝と王手をかけながら、中日、巨人に連敗し、川上巨人の逆転V9を許した73年。

 この2試合は、0対9と完敗したシーズン最終戦、10月22日の巨人戦は論外として、2対4で敗れた2日前の中日戦も、心情的に巨人に優勝させたくない中日の先発・星野仙一が、打たせるつもりで真ん中に投げたのに、阪神の各打者は力んで凡打の山。

 結果的にどちらの試合も平常心で戦えなかったわけで、連敗もやむなしと言わざるを得ない。

 となると、V逸を決定づける勝利を逃した“痛恨の試合”は、10月11日の巨人戦だ。前日、田淵幸一の逆転満塁弾で6対5と巨人に勝利し、首位に立った阪神は、この日も初回に4点、2回に3点と勢いを持続。7対0とリードした。

 これに対して、巨人はエース・堀内恒夫が1回でKOされ、2回の守備で長嶋茂雄が右手薬指を骨折して退場と、弱り目に祟り目。この時点で誰もが阪神の勝利を確信した。

 ところが、4回無死一、二塁の加点機を雑な攻撃で潰してから、次第に歯車が狂っていく。その裏、3回まで巨人打線を無失点に抑えていたエース・江夏豊が突然崩れる。先頭の高田繁に四球を与えたあと、王貞治に右中間フェンス直撃の二塁打を打たれたことが大きな分岐点となった。

“世紀の落球”で悪夢の逆転負け

 痛烈な当たりに、センター・池田祥浩は本塁打と思い、あきらめた直後、体のすぐ横に打球が飛んできた。当時の新聞は「捕ろうと思えば捕れた打球」と報じている。リズムを乱した江夏は、長嶋の代役で出場した次打者・富田勝に左越え3ランを浴び、なおも安打と四球で2人の走者を出したところで、まさかの交代となった。

 その後、試合はノーガードの打ち合いの末、10対10の引き分け。結果的に楽勝ペースが一転ドローになったこの日のツケが、最後の最後で回ってきて、9年ぶりVを逃した。

“勝利を逃した”といえば、もう1試合、8月5日の巨人戦も、1点リードの9回2死から黒江透修の中飛を池田が転倒して捕球に失敗する“世紀の落球”で悪夢の逆転負け。10・11とともに“痛恨の試合”として虎党の脳裏に刻まれている。

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