巨人「松原聖弥」が不動の1番になるために必要なことは?【柴田勲のセブンアイズ】
戦力層の厚さがモノをいっている
巨人が前半戦最大のヤマ場である9日からの阪神3連戦(甲子園)を2勝1敗と勝ち越してゲーム差を1.5とした(12日現在2.0)。
9日は3点を追った7回にゼラス・ウィーラーの安打と松原聖弥の二塁打で無死二、三塁としながらも雨脚が激しくなり降雨コールドとなった。4月6日の阪神戦でも7回降雨コールド負けを喫しており、運がないなあと思っていたが、翌10日は1回に4点を奪って早々に試合の主導権を握った。終わってみれば8対1の完勝だった。
大差勝ちの後の11日は競り合って、最後は1対0で振り切った。この1勝は大きい。なにより阪神の先発・西勇輝には今季3戦3敗していた。天敵になんとか黒星をつけることができた。実際、この日も西勇のできは良かった。低め低めにスライダー、シュート、フォークを集めて、打たせて取る投球に徹していたし、ストライクを先行させて巨人の打者を追い込んでいた。
8回、大城卓三にタイムリーを許したが2ストライクからの投げ急ぎで、外角から少し甘く入ったスライダーだった。三遊間を割ったが、打った大城もよく食らいついた。完投した西勇には悔いの残る一球だったと思う。
もちろん、巨人の高橋優貴も抜群に良かった。7回を1安打無失点だったが、球数は81、ストライクを先行させて投手有利のカウントに持っていった。変化球が切れていたし球にも力があった。
エース・菅野智之が離脱しているけど、この高橋に山口俊、さらにエンジェル・サンチェス、C.C.メルセデス、さらに戸郷翔征とよく頑張っている。打線も丸佳浩が本格復調して、坂本勇人、岡本和真の三枚看板が得点源となっている。吉川尚輝の離脱を北村拓己がカバーし、ウィーラーも勝負強い打撃を発揮している。
巨人は開幕から離脱者が相次いだものの、戦力層の厚さがモノをいっているし、ここにきて投打のバランスが整ってきた。
阪神は前半戦、「騎虎の勢い」で走ってきたが落ちてきた。新人・佐藤輝明の大活躍でワイワイやってきた感があるが、その佐藤が壁にぶつかっている。この3連戦、9打数1安打で、7月の月間打率は1割9分4厘だ(12日現在)。持ち味であるフルスイングができていないようだ。セ・リーグの対戦投手も研究と対策を重ねている。内角攻めで崩されているのかもしれない。
4番の大山悠輔もよくない。自分の打撃ポイントまで一直線にバットが出るかどうかだが余分な動作がある。潜在的に力強さを求めるあまり力んでいる。一度、バットを寝かせて構えるといった手があってもいい。ジェリー・サンズやジェフリー・マルテらは力まず振っている。
とにかく出塁すること
さて、巨人に戻るが、いま一番注目して見ているのが松原だ。1番打者として完全に定着できるかどうか、だれが出てきても、「外せない選手」になれるかの正念場だ。
決して大柄ではないけど小力がある。足があれば守備力も高い。11日、西勇の右翼ファウルゾーンの打球を追いかけて、フェンスに張り付くようにしながらジャンピングキャッチしてみせた。身体能力の高さがなせる業だ。
梶谷隆幸が10日、右手甲に死球を受けて中指を骨折した。左太もも裏の張りから6月22日のDeNA戦で復帰していたが、これでまた長期離脱になる可能性が高い。
梶谷は1番打者として期待されFA移籍してきた。10日は「6番・右翼」で出場していたが、今季32試合で1番に座っていた。
原辰徳監督は梶谷と松原を天秤にかけて調子がいいと思った方を1番に起用してきたが今後は松原が務めることになる。
1番・梶谷もいいが、松原だと2番以下の打線に厚みが出る。梶谷は9月には戦線に復帰するだろうが、それまでに前述したが「外せない選手」になる必要がある。
とにかく四球でもなんでもいい。出塁することだ(12日現在の出塁率、.319)。出塁すれば盗塁をしかけられるし、エンドランなどの作戦も立てやすい。三振して帰ってきたら、原監督に「荒っぽい」、「淡泊だ」といった評価を受ける。一時期の吉川尚がそうだった。
そのためには「選球眼」を磨くことに尽きる。徹底して粘る。打席に漫然と立つのではなく、「どの球ならヒットにできるか」、「どの球なら振らないか」と頭の中に入れておくことだ。
私は1番として平均55~60個の四球を記録していたと思う。だから川上(哲治)さんは不調に陥っても、総合力を買って1番から外さなかった。
打率がたとえ2割6、7分であっても1番打者としての評価が高ければ3割の価値にもなる。本塁打は年間、8本~10本あれば十分だろう(12日現在8本塁打)。 あとは1年間乗り切るだけの体力をつけることだ。
13日からは東京ドームで3位・ヤクルトとの2連戦だ。これもまた前半戦のヤマ場である。締めの2試合をジックリと見ることにする。