ミスタードーナツ日本上陸50年の苦境 専門家は「ミスドを取り巻く環境は八方塞がり」
「主食」と「スイーツ」の差
「70年代は、アメリカ文化を消費者が熱烈に支持していた時代です。マクドナルドとミスタードーナツの日本進出は、その象徴と言えます。それから半世紀が経つと、マクドナルドのハンバーガーは日本人にとって“主食”の1つとして認識されるようになりました。ところがミスドの場合は、あくまでも基本は“スイーツ”の専門店でしかありません」(同・千葉氏)
お腹が空いたら、消費者は“主食”を食べる。だが、スイーツは様々な理由から我慢することができる。これが最も大きな違いだという。
「健康ブームの影響で、ドーナツは身体に良くないというイメージが浸透してしまいました。おまけにコンビニスイーツという強力なライバルが出現しました。ミスタードーナツは、中華麺や炒飯、パスタといった商品を充実させていますが、やはり一般的にはドーナツの専門店だと思われています。消費者は『甘いものは太る』とミスドに行くことをためらっても、コンビニには行きますし、その際にスイーツをついで買いしてしまうのです」(同・千葉氏)
かつて会社員は昼食を終えると、ミスタードーナツを訪れてコーヒーとドーナツを食べていた。だが、今ではコンビニに行き、コーヒーとスイーツをテイクアウト、オフィスに戻って楽しむというわけだ。
日米のドーナツ不振!?
「ティラミスが80年代末にブームになると、コンビニ各社が商品化して評判になりました。続けて90年代初頭はパンナコッタもヒットさせ、『コンビニはスイーツも美味しい』と消費者に認識させたのです。それから30年近くが経ち、コンビニには高レベルで多様なスイーツが並んでいます。ミスタードーナツは基本的にドーナツだけですから、商品の多様性という点でも遅れているといえるでしょう」(同・千葉氏)
アメリカでは1990年、食品大手企業アライド・リヨンズがミスタードーナツを買収。同社が所有するダンキンドーナツに転換された。今のアメリカでミスタードーナツのまま経営を続けているのは、イリノイ州の1店舗だけだという。
実のところアメリカでも、ドーナツは消費者の支持を得ていない。ダンキンドーナツの英語版公式サイトを閲覧すると、商品紹介はドリンクがトップで、次に表示されているのはサンドイッチだ。ドーナツはベーグルの次、7番目という位置づけになっている。
「ミスドもパスタや中華麺に力を注いでいます。商品ラインナップを主食化し、脱ドーナツを目指しているわけです。その影響で、消費者は統一のなさを感じていると思います。サイゼリアはファミレスですが、イタリア料理以外はありません。少なくとも日本の消費者は、こうした統一感を好みます。率直に言って、ミスタードーナツを取り巻く環境は八方塞がりだと指摘できると思います」(同・千葉氏)
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