サッカー五輪代表「過去最多の海外組」を喜べない理由 世界に買い叩かれるJリーガーたち

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 サッカーの五輪代表18人が発表された。海外でプレーする選手は史上最多の9人。ここに6月28日、独2部デュッセルドルフへの移籍が発表されたMF田中碧(あお)(22)も加わる。

「わが国のサッカーもレベルが上がったものだなあ」

 なんて悦に入っている方はご用心。

「レベルなんて全然変わっていませんし、むしろ由々しき事態と言っていい」

 とサッカーライターが眉をひそめる。

 約20年前の2002年W杯日韓大会直前の世界ランクで日本は32位だった。現在は28位。少しランクアップしているが、17年は50位台だったわけで、決して右肩上がりではない。また、

「海外組といっても、チャンピオンズリーグに出るような強豪クラブは見当たりません。まあ、そのレベルにいたら、クラブが五輪出場にダメ出ししますけどね」

 例えば、予選リーグ同組のフランス代表に、パリSGで活躍する世界的スターのエムバペ(22)の名がないのはそのためだ。

「2年前、オランダの強豪PSVに移籍したMF堂安律(23)は、クラブが出場を許可しないことが予想され、いったん代表構想から外れました。でも幸か不幸か伸び悩み、今はクラブに不可欠な存在でなくなったため、“五輪いってらっしゃい”となった」

 日本代表は決してスター集団ではないのである。それにしても、“由々しき事態”とはどういうことか。

「海外組が増えたのは、ひとえにJリーガーの年俸が安すぎるからです。Jでは若手に億単位の年俸は払えませんが、海外なら弱小クラブであってもJの倍以上は払ってくれます」

 いま『安いニッポン』という本が話題だ。年収1400万円はアメリカでは低所得、ニセコなどの不動産を外国人が買い漁っている、薄給だったアニメーターが続々と中国のアニメ会社に転職している、といった衝撃的な話が綴られている。

 本書には書かれていないが、Jリーグも同様に世界から買い叩かれているのだ。

 もっとも、選手がより高レベルのリーグを志すこと自体は悪いことではない。そもそも一握りのビッグクラブを除く世界のクラブのほとんどが、育てた選手を売って収入を得る“育成型クラブ”である。しかし、

「Jは、移籍時にクラブに入る違約金が海外と比べて桁違いに安いので、育て損と言っていい状態なんです」

 ならば、違約金を高くすればいいのではと思うが、

「そうすると海外を目指す選手に嫌われ、他クラブに逃げられてしまいます」

週刊新潮 2021年7月8日号掲載

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