気づけばあなたも「小室佳代さん」に? 我が子、我が孫をダメにする「子ども依存」

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「うちの子は特別」と親は誇る。「親に感謝」と子どもが言う。麗(うるわ)しき家族愛、だが……。切ろうにも切れないがゆえに、厄介極まりない親子関係。以下は、ステイホームを強いられるコロナ禍で、複雑さを増す親子問題の研究である。テーマは「子ども依存」。

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 50歳を超えた親が、大学を卒業して、すでにいい大人であるはずの息子と、朝、一緒に出勤する――。普通は、中学生くらいで子どもは親と距離を取りたがるようになります。この親子は一体どういう関係にあると言えるでしょうか。

「息子は全部自分で決めてやるタイプなんです。中学でインターナショナルスクールに進学することも自分で決めました」

 先日発売された雑誌(「週刊文春WOMAN」2021年夏号)に、小室佳代さんのこんな言葉が掲載されていました。息子の圭さんは小さい頃から自立的な人間だったというアピールなのでしょう。

 これを読んだ瞬間、私は改めてこう感じました。やはり、佳代さんは典型的な「ある親の類型」に当てはまるなと。

 一般的に、小学生の子どもが最初からインターナショナルスクールについて知っていて、自発的に調べて選ぶことは、まあなかなかあることではないですよね。果たして佳代さんは、圭さんがインターナショナルスクールに行きたいと言い出すように「誘導」したことがなかったでしょうか。

 私のもとにカウンセリングに訪れる「ある親の類型」の方は、みんな「子どもには好きにさせてきました」と言います。なぜなら、自分が親としてその類型だという自覚がないからです。

 先の「親子出勤」の話もそうですが、報道等を見聞きする限り、佳代さんは典型的な過干渉、つまり「子ども依存」から抜け出せていない親であると思います。

〈家族問題カウンセラーの山脇由貴子氏は、東京都の心理職として、19年間の児童相談所勤務経験を持つ「親子問題」の専門家だ。その山脇氏によると、ここ数年、「親と縁を切りたい」と言って児童相談所を訪ねて来る子どもが増えている。そうした子どものほとんどが親による過干渉、過保護、すなわち「子どもに依存する親」に悩んでいるという。

 自分とは無縁の話。そう感じる読者も多いかもしれない。だが、子ども依存の問題はそれほど単純ではない。先ほど触れたように、当の親に自覚がないからだ。子どものことを考え、良かれと思ってサポートしてきただけ。そう信じ切っている人は、佳代さんに限らず意外と少なくないのではないか。しかし――。〉

 子どもに依存している親は、一見、我が子を手塩にかけて育てている教育熱心な「良い親」に映ります。しかし、実際には子どもへの執着心・関心が強すぎ、子どものすべてを自分の思い通りにしようとしているだけのことが多い。そんな子ども依存の親に特徴的な我が子の教育法は、大きく2パターンに分けることができます。

靴下、どうしていますか?

 ひとつは「小室佳代さん型」です。

「うちの子は特別に出来がいいから長所を伸ばさなければならない!」

 こう考え、必死に子どもに「エリート街道」を歩ませようとする。我が子は成功者になるのだ、成功者にしなければならないと思い込み、一心不乱にこの目標に突き進む。圭さんは小さい頃からバイオリンを習い、音大附属小学校に通って、中学でインターナショナルスクールに進学し、留学もしていますが、幼少期の習い事はどの家でも親が習わせたいもの、親から見て「子どもをこうしたい」というイメージに合うものを習わせる傾向にあります。

 訊(き)けば子どもはみんな「自分が習いたいと思った」と言いますが、実際は子どもがそう言い出すまで親が情報を与えている。見学に行かせて、「楽しそうだね」なんて親が耳打ちすれば、子どもは「うん、楽しそう」と答えて言われた通りに習い出すものです。

 事実、カウンセリングをすると、「子どもの時は親にイヤと言える雰囲気ではなかった」「ほめられたい、親を喜ばせたいと思って、親の顔色を窺(うかが)っていた」と振り返る方が少なくない。

 この「佳代さん型」の場合、子どもを東大や芸大に行かせるなど、親が端(はな)から子どもの「成功人生の絵図」を決めていることが多いですね。

 そしてもうひとつは「監視型」です。

「うちの子は悪いことをするから、すべて私が監視しなくては!」

 こう先回りして心配し、過干渉に陥る。私のところに相談に来たある母親は、「うちの子はすぐにものをなくすんです」と言って、子どもの鉛筆を筆箱に紐(ひも)でくくりつけ、絶対になくさないようにしていました。

 普通、子どもが鉛筆を1本なくしたところで親は気づきません。しかし、この型の親は常に我が子を見ているのでどんなに些細な変化でも気づくんです。

 このようにふたつのパターンに大別できる子ども依存の親は、結局のところ子どもを支配しようとします。中には、週8で習い事に通わせる親もいるほどです。そして、放課後遊びに行ってはいけない、休日も家にいなさい、あの子と遊んじゃダメだと縛る――。

〈「習い事」というキーワードで我が身を振り返ってみると、たしかにどこか思い当たる節があり、自身の中に子ども依存の「素地」が全くないとは言い切れない気がしてくる読者も多いのではないか。

 では、どういう特徴を持つ親が子ども依存に陥りやすいのだろうか。〉

 まず、シングルマザーや夫婦関係が悪い家庭は、どうしても子ども依存のリスクが高くなります。夫がいなければ、孤独感から「私にはこの子しかいない」と感じる傾向が強まり、親子関係は密着したものになっていきます。子どもが男の子の場合、息子を「恋人」のように思ってしまう。小室親子はまさにこの関係だと言えるでしょう。

 また、夫婦関係が疎遠である場合も、やはり孤独感から子どもに執着してしまいます。何だかんだ言って、夫に関心を持ってもらえないというのは妻にとってとても辛いことなんです。

「夫側」は大抵こう反論します。

「妻とは普通に会話していますよ」

 しかし、夫が言うところの“会話”は、「あれ、あそこにあるから」「明日はこうだから」といった具合で、実は“事務連絡”に過ぎないケースが多い。「髪切った?」「そのカバン可愛いね」など、妻への関心を伴った文字通りの会話がなされていないと、妻は不安を覚えます。

「私の存在価値って何なんだろう?」

 こうなると、女性の側は「妻」ではなく「母親」としての役割にしか価値を見出せなくなります。必然的に子どもにだけ関心が向かい、過干渉、子ども依存状態に陥ってしまうのです。なにしろ子どもは、夫と違っていつでも「お母さん」と言って甘えてくれますし、母の日には花をくれたりもしますからね。

 こうして子ども依存になった親が、子どもとの関係に悩んで私のところに相談に来た時、私はよくある質問をします。すると、多くの親は「確かにやっています」と答えます。その質問とはこうです。

「子どもが脱ぎっぱなしにした靴下を、代わりに片づけていませんか?」

 この「靴下問題」は、子ども依存への第一歩です。みなさんは、果たしてどうでしょうか?

依存の連鎖

 次に子ども依存になりやすい親の特徴として挙げられるのは完璧主義。「こうあらねばならない」と思い込みがちな人です。

 子どもに完璧を求める。そして思い通りにならない状況に耐えられない。この心理状況を「欲求不満耐性がない」と言いますが、このタイプの方はもともと自分のアイデンティティが脆(もろ)い。そして理想が高く、それが実現されない状況を許容し、受け入れることができない。自分が完璧かはともかく、むしろ完璧ではない自分のコンプレックスを、子どもを完璧にすることで解消しようとするのです。佳代さんは、これに当てはまるのではないでしょうか。

 金銭トラブルの件を見ても、彼女には自分の非を認められない脆さが感じられます。ご主人と死別され、経済的にも決して恵まれていたわけではない。自分自身に強いコンプレックスを感じている親ほど、子どもを完璧に育て上げることで、自らが「完璧な親」になることを願う。言わば、子育てによる親自身の人生のやり直し、子どもを通した親の自己実現と言えます。

 佳代さんからは、圭さんを「特別」な存在に育て上げたいという意思が強く漂ってきます。これは息子への愛情というよりも、佳代さんの自己愛からくるものなのではないでしょうか。特別になりたいのはむしろ自分のほうであり、それを圭さんに投影している……。

 なお、コロナ禍も子ども依存を強める要因になっていると言えます。経済不安の世情において、我が子を成功者にしなければならないというプレッシャーはより高まりますし、人と容易に会えない環境は孤独感を強め、常に一緒にいる子どもへの過干渉度が増す恐れがあるからです。ステイホームの中で、つい子どもを怒鳴ってしまいがちな方は、単なるイライラではなく子ども依存になっていないか注意する必要があります。

 さらに子ども依存の親は、自身の親との関係が良好でなかったケースが目立ちます。子ども依存の親は完璧主義であることが多いので、「表向き」は自分と親との関係が悪かったとは認めず、「親にはちゃんと育ててもらいました」と言います。しかし、「内心」は違う。

 心理学の世界に、「ロールシャッハテスト」という信頼度の高い有名なテストがあります。左右対称の10個のインクのシミを見て、何を連想するかを尋ねるテストです。

 これを子ども依存の親に実施すると、口では「父親との関係は問題なし」と言っていた方が、父親を暗示するインクのシミを見て「このシミは何の意味もないように見えます」と答えたり、母親のことが大好きと言っていた方が、母親を暗示するインクのシミを見て嫌悪感を示したりすることが極めて多い。これは、親に縛られていた過去に対する拒否感の表れと言えます。つまり、「子ども依存の親」の親も「子ども依存」であったという連鎖が浮かび上がってくるのです。

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