「松坂大輔」が引退 アスリートであり続けられなかった野球人生 イチローも過去に苦言「なめてやっているだろ」

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「~世代」という呼び方

 他にも松坂の出現によって定着したものがある。それが「松坂世代」という形で、同世代の選手を一つの大きな集団として考えるようになったことだ。それ以前も花の(昭和)13年組、22年組といった呼ばれ方をしたことはあったが、「~世代」という呼び方が定着したのは松坂世代からである。

 同世代の選手では、藤川球児(元阪神)や東出輝裕(元広島)など高卒でプロ入りして活躍した選手もいるが、和田毅(ソフトバンク)、杉内俊哉(元ソフトバンクなど)、村田修一(元横浜など)、永川勝浩(元広島)など大学や社会人で一気に才能が花開いた選手が多いのも特徴的である。

 松坂という世代を牽引する選手が彼らに与えた影響、またスターが出現した時にその同世代にもスポットライトが当たる現象を生み出したという影響の大きさを改めて感じさせられる。

 ただ、そんな時代を切り開いてきた松坂も新しい時代の波に乗り切れなかったことは確かである。和田毅やダルビッシュ有、田中将大、前田健太などベテランになっても高い水準を維持している選手は、みんなトレーニングによってフィジカル面をキープしていることがその体格やプレーからも表れている。

 一方の松坂は30歳を過ぎてから明らかにウエイトオーバーになっているように見えた。昭和の時代であれば、テクニックと投球術で何とかなったかもしれないが、現在はアスリートであり続けなければ活躍することは難しい時代になっている。

フィジカル強化に取り組んでいれば……

 2006年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の合宿でイチローから「疲れてなめてやっているだろ、お前」「分かるぞ、お前」「深いところでなめてやっているだろ」「なめてるな」と言われているシーンがあったが、早くから大成功してしまったことで、緩みが出てしまった部分もあった。

 もちろん、若い頃の登板過多や故障の影響もあったことは確かだが、早い段階から高い意識でフィジカル強化に取り組んでいれば、200勝も楽にクリアしていたのではないだろうか。

 選手として晩年の姿は残念な部分はあったものの、やはり残したものの大きさは計り知れないものがある。令和の時代にも、松坂のように球界の常識を次々と変えるような“新時代の怪物”がまた出現してくれることを期待したい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年7月9日掲載

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