ジャニー喜多川氏の死から2年 退所やグループ解散が続く中で改めて“遺したもの”について考える
18歳当時の滝沢秀明の言葉
ちなみに、こんなことを語っているジャニーズJr.がいる。
「やっぱりこれからの時代は、『自分で営業していかないとダメでしょ』って思うし、『こういうことがやりたいんだ』っていうのを、周りの人にどんどんアピールしていかないと」(ザテレビジョン2000年7月21日号)
タレント自らの営業の必要性を訴える、この発言の主は……当時18歳の滝沢秀明である。
既に民放ドラマにも主演していた18歳のジャニーズJr.のリーダーが、そこに胡座(あぐら)をかかずに、当時から「自分のやりたいことをアピールするべき」と考えていたことにも驚きだが、20年後の今、彼がジャニーズJr.の育成を引き継いでいる以上、やはりジャニーズというのは自分で考えて動いていく集団なのだと再確認させられる。
そう考えると、今年の1月に発表された、ジャニーズJr.と22歳のタイミングで、今後も活動を継続するか協議するという制度も、自分の頭で自分の人生を考えることを課しているようにも感じられる。
そして、特筆すべきは、このような自分の頭で考えさせる“自由”を与えながら、芸能事務所にありがちな“束縛”からも無縁である点だ。
現在もジャニーズ事務所に所属する元・男闘呼組の岡本健一と、ジャニーズ事務所は退所したものの、今も現役タレントと交流が深い、元・シブがき隊の薬丸裕英が「やめる」ことに関してこんなやりとりをしている。(TOKYOFM「TOKYO SPEAKEASY」2021年5月6日放送)
岡本健一:「すごいと思いますよ、シブがき隊にしても僕ら(※男闘呼組)もそうですけど、解散したいとか一時休止したいとか……みんな聞いてくれるじゃない、タレントの気持ちを。普通だったら勝手にやめんなよって話になると思う」
薬丸裕英:「(ジャニーズ事務所は)そういう理解はあるよね」
岡本健一:「気持ちを優先してくれる、みたいな」
東山紀之のマッチへの発言
これは、ジャニーズ事務所という組織の大きな優しさである。育成に経費がかかる芸能事務所の性質上、売れたタレントは簡単に手放したくはない。無理にでもやめさせないほうが経営的には合理的な判断とすら言えるが、ジャニーズはそれをせず、本人たちの気持ちを優先させる。
だが、これだけ優しさに担保された自由があると、その自由のもとでどのように行動するのか、タレント側のモラルやセンスもまた問われていると言えるだろう。
そう考えると、活動自粛処分中に退所を決めた2人は、最後に優しさの受け取り方を間違えたのかもしれない。山下智久は収録したものの発売できなくなったCDを、近藤真彦は延期されたままの芸能活動40周年記念ライブを残したままの形となった。
事務所の最年長所属タレントだった近藤真彦の退所への、東山紀之の発言は重く響く。
「退所のコメントでも、すごく薄っぺらく感じるんですね」(テレビ朝日「サンデーLIVE!!」2021年5月2日放送)
仏教に「自燈明(じとうみょう)」という言葉がある。
開祖であるブッダが亡くなるとき、弟子たちが「これから私たちは何を頼って生きていけばいいのでしょうか」と問うと、ブッダは「私が死んだら、自分で考えて自分で決めろ。大事なことはすべて教えた」と答えたのだという。
ジャニー喜多川という、すべてを教えてくれた“開祖”が亡くなって2年。どう自ら明かりを燈すのか。タレントたちそれぞれに委ねられているのかもしれない。
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