「桐生くんは大一番に弱い」不破弘樹氏が指摘 惨敗に本人の胸中は?
やはり「心の弱さ」が覗いたか。自己ベスト9秒台の選手が出走8人中4人もいるという男子100メートルレースで、そのうちの一人、桐生祥秀(25)は5位という不甲斐ない結果に終わった。彼の五輪出場決定を心待ちにする関係者は落胆したろうが、さて本人の胸中は?
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五輪代表選考会を兼ねる陸上日本選手権、6月25日に行われた男子100メートル決勝の結果はご承知のとおりだ。トップとなった10秒15の多田修平(25)のほか、3位の山縣亮太(29)、4位の小池祐貴(26)ら自己ベスト9秒台の顔ぶれが並んだ中、「日本初の10秒突破男」桐生は遅れること5位。五輪男子100メートルの代表枠3人に多田と山縣が内定となるも、桐生は“保留”に……。
「残念な話ですよね」
とは、さる運動部記者。
「5月の五輪テスト大会で桐生は、人生で2度目となるフライングで失格を食らった。さらに同じ月には右アキレス腱を痛め、ケガが長引いた結果、6月6日、鳥取県で開かれた大会でライバル山縣が9秒95の日本新記録で優勝したというのに、桐生は決勝そのものを棄権せざるを得ませんでした。日本生命ほか多数のスポンサーから支援を受ける身なのですから、もう少し頑張ってみせないと」
男子100メートルの元日本記録保持者にして「TEAM不破」代表理事の不破弘樹氏もクールな見方。
「山縣くんは五輪への出場が懸かるごとに自己ベストを更新し、今年も日本新を出すなど明らかに本番に強い。その点、桐生くんは大一番に弱い気がします」
桐生は長らくその“ガラスのハート”ぶりが指摘されてきた。先頭を独走するようなレースではぐんぐんタイムを縮める。が、スタートを得意とする他の走者と競り、彼らの姿が視野に入るような状況では、途端に筋肉が硬くなるのか焦るのか、差を広げられてしまう。今回の決勝がいい例だ。
「ただ、まだ桐生にチャンスはあります。27日の200メートル決勝で優勝するなどした小池が今後、五輪では200メートルに専念したいと望んだ場合、100メートル代表の残る1枠に桐生が滑り込むかもしれません」(前出記者)
パリ、いやロスまでも
しかし、それはあくまで棚ぼたの類。レース後の会見で桐生の表情が冴えなかったのは当然だろう。
「まぁ、悔しいってのは変ですけど、今まで東京(五輪)を目指してきた7、8年間でいろいろあった。いったん一区切りかなと」
そう語った桐生。彼が出演する日生のCMは〈桐生は終わったと報道されることも〉過去にあったが乗り越えてきた旨の重々しいナレーションが流れる。五輪の「4×100メートルリレー」にはカーブを走る上手さとバトン受け渡しの技が評価されてメンバー入りしそうだが、本人の弁がこの調子では、またも「終わった」などと取沙汰されかねない。
その真情はいかに。目下、彼を支えるのは、昨年元日に入籍した妻と生後4カ月の長男の存在だという。
「本人は赤ん坊が可愛くて仕方ないらしく、“息子が物心つくまでは頑張る”と今も話していますよ」
と、年来の知人が言う。
「独身のころは朝食を食べなかったりしましたが、最近は奥さんが食事を用意してくれるので食生活も改善されてきています。本人は“息子が『自分の父親は陸上選手なんだ』としっかりわかってくれるまでやる”と言いますから、3年後のパリ(五輪)、いや、子どもが物心つく7年後のロスまでやる気ってこと。今回はケガという不運があったし、そんなにショックを受けた感じでもなかったですよ」
ガラスのハートを脱し、わが子のために羽ばたけるか。