文大統領が豪語した「日本の奇襲攻撃を克服」 実際にはほど遠い「脱日本」
対応、説明を拒んだ韓国
今月2日、ソウルで開かれた「大韓民国 素材・部品・装備産業成果懇談会」に文在寅(ムン・ジェイン)大統領が出席。スピーチした文大統領は「奇襲攻撃するかのように始まった日本の不当な輸出規制措置に対抗した結果、『素材・部品・装置の自立』への道を歩み2年が経過した」、「我々は共生と協力により、確固たる国家樹立へと前進した」と日本を名指しし、文政権下で行った対日政策の成功を宣言した。しかし実態は張り子の虎とでも言うほど、「脱日本」にはほど遠い状況なのだという。韓国在住のライター、羽田真代氏によるレポート。
今から2年前、日本が韓国をホワイト国(安全保障上の友好国=大量破壊兵器などの開発や拡散に関わる恐れがない国)から除外した。文大統領が今回のスピーチで述べた“奇襲攻撃”とはこの韓国のホワイト国除外を指す。
日本の経済産業省が2019年7月1日に出した「大韓民国向け輸出管理の運用の見直しについて」には、「信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況」「大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生した」と明記されている。
こうなった原因は、日本から韓国に正規輸出された民生用の原材料が不正な形で流出し、北朝鮮やテロ組織に悪用されかねない事態や不適切事案が複数発生したことにある。これらに対し、日本は再三、韓国に改善を促したのだが、韓国は対応しようとせず、日本に対する説明責任も果たすことはなかった。
“日韓貿易戦争”を宣言した大統領
韓国側が開催を拒否し続け、2016年以降開かれることのなかった意見交換会(戦略物資会議など通常は2年に1度開催)も日本側は度々開催を要請してきた。ホワイト国から除外されて困るのは韓国のみで、日本は半ば思いやりとして声掛けを続けたわけだが、民生用の正規輸出品が北朝鮮の核開発やテロ組織に利用されうる状況は看過しがたい。韓国側に改善が見られなかったことから、日本は仕方なく判断をしただけなのだ。
当時、韓国政府は「その前に下された徴用工への賠償を求める判決を不服とした日本が、報復のために韓国をホワイト国から除外した」と主張し、韓国メディアもその言い分をそのまま報じた。北朝鮮にフッ化水素などを横流ししていた疑惑はご都合主義を貫き知らぬ存ぜぬで、政府の見解が今でも韓国民の共通認識となっている。
当時の文大統領は「断固として相応措置をする。今後起きる事態の責任は全面的に日本政府にあるという点を明確に警告する」とし、“日韓貿易戦争”を宣言した。そして、「二度と日本には負けない。勝利の歴史を作る」とも述べていた。
冒頭に述べた懇親会のスピーチは、2年前の宣言内容を有言実行し、日韓貿易戦争に勝利したと国民にアピールし、自身を正当化しようとするものだった。
日本政府による対韓輸出管理強化を受け、韓国政府はフッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストの自国内生産に乗り出した。同年8月に主要な部品・素材の国産化を目指し、100にのぼる戦略品目を指定。7年間で約7700億円の研究開発投資を行うと発表。
2020年4月には「素材・部品・装備(装置や設備)産業の競争力強化に向けた特別措置法」が施行され、素材や部品専門企業に加え製造装置メーカーを育成対象とし、韓国政府はこれら企業の競争力強化の支援を開始した。
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