佐藤二朗主演、ひきこもり非常勤講師の優しさに心打たれるドラマ「ひきこもり先生」
不登校の生徒たちを演じる役者陣
ふたつめは不登校の生徒たちを演じる役者陣。みんな手練れだが、特に3人に着目している。
まず、鈴木梨央の成長をまるで我が子のように誇らしく眺めている。子役時代の出演作で記憶に残っているのは、「Woman」(日テレ・2013年)でシングルマザー・満島ひかりの娘役や、色々と問題視されたドラマ「明日、ママがいない」(日テレ・2014年)のドンキ役。母親が男を鈍器で殴ったことからつけられた衝撃的なあだ名だ。明るく屈託のない子というよりは、不安や絶望を内に秘める役がすこぶるうまい。
今回も、自己肯定感を得ることができず、死を常に考えているような女子の役だ。自分は母親が不倫相手との間にできた子供で、「汚い子、生まれちゃいけない子だった」と自傷行為も繰り返してきた。強がって気丈にふるまうが、自尊心は相当低い。陽平に出会ったことで救われた生徒のひとりを熱演している。
また、両親の不和と貧困で不登校になっている男子・坂本征二を演じた南出凌嘉も、「不運だが不幸じゃない、基本は陽キャラ」を演じられる俳優だ。最も感動したのは「昭和元禄落語心中」(2018年・NHK)。孤児だが底抜けに明るい、落語の天才・助六(山崎育三郎)の幼少期を演じていた南出。快活で楽天的、大ネタの落語を嬉々として披露する少年の役に目を見張ったもの。子供の貧困の惨状を描いた第2話で、南出は健気な息子を好演。3話以降、学校にも来られるようになって本当によかったと胸をなでおろしている。
ひきこもりの大人がひとり
最後にもうひとり。不登校ではないが、花壇の花を愛する生き物係の男子・伊藤和斗役の二宮慶多。かつていじめる側だったが、今はいじめられる側、スクールカーストの最下層に転落した心優しい少年である。二宮はなんといっても、映画「WE ARE LITTLE ZOMBIES」の主演が最高だった。彼の絶妙な歌声、シュールな世界観にしっくりハマる独特の存在感。今後もおおいに期待しちゃう。
さて、3つめ。子供たちの不登校にばかり目が行くというか、それが主軸ではあるのだが、実は劇中にひきこもりの大人がひとり、いる。陽平のひきこもり仲間・依田浩二である。演じるのは玉置玲央。ひきこもり歴は筋金入りの21年。長引けば長引くほど脱出が困難を極める大人のひきこもりも描くことで、社会の問題の根深さも示唆。
非常勤講師に起用された陽平に、ちょっとだけ嫉妬をしているのも可愛いし、どうやらコンビニの店員に恋をしている様子。とても小さな喜びを玉置がチャリンコ全力疾走で表現しているので、行く末は明るく見える。見えるけれど、どうなることやら。彼の今後が気になる。
全5話は正直、短い! 早く原稿に書かなきゃ放送が終わっちまう! 残り2話、学校内に蔓延るいじめ問題も含めてどう描くのか、きっちり見守りたい。
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