「50代後半でもモデル、元女優と付き合えた」 婚活パーティーのリアルと必勝法を経験者が語る

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お見合いの心がけ

 そんな婚活パーティーも、コロナ禍で状況が大きく変わった。会場ではもちろんマスク着用。男女の間には透明のアクリル板が設置されるなど、飛沫対策が講じられている。マスクで相手の顔がよくわからない。声もくぐもってしまう。

 緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出自粛の時期になると、オンライン婚活パーティーも始まった。Zoomを利用して、自宅にいて参加できるスタイルだ。

 オンライン婚活で成果を上げるポイントは、通常の婚活パーティーと同じスタンスで臨むことだろう。自宅だからといって部屋着で参加すると、だらしないと思われて、印象はよくない。エリの付いたシャツにジャケットを着て、清潔できちんとしたイメージを相手に与えるべきだ。

 そして、背景や照明も意識した。散らかった部屋や壁が汚れたキッチンで会話していては好意をもたれない。そこで、書棚の前で知的な雰囲気を演出する。照明は、就職活動のオンライン面接用のキットを数千円で手に入れられる。円形のライトを上にセッティングすることで陰影を生み、顔がシャープに見える。

 結婚相談所では、ミュージカル系の女優とも出会った。

「歌い続けることだけ認めていただけたら、あとは私からの希望はありません」

 結婚相談所を通してお見合いをした、メジャーな劇団で大きな役を演じていたその女優は言ってくれた。しかし年齢を重ねると、無駄に謙虚になってしまう。必要以上に相手のことを考えてしまう。自分では力不足。自分とでは幸せな人生を歩めない。そんなふうに思い、悩んでしまう。すると、もう良縁にはならない。

 そんな結婚相談所で一定数のお見合いを実現するには、次のことを心がけたい。

(1) 登録者数の多い相談所を選ぶ。

(2) 担当カウンセラーの意見を参考にしつつも、必ず自分で判断する。

 小規模の相談所のスタッフは決まって「登録者数が多ければいいというわけではありません」と言う。このような言葉をけっして信用してはいけない。絶対数が少なければ、それだけチャンスも少ない。実際に2社、登録者数の少ない相談所も利用したが、ほとんどお見合いは成立しなかった。飛び込み営業と同じで、数多くアプローチしなければ成果は上がらない。

 また、相談所に登録すると、多くの場合は担当カウンセラーが付く。彼ら彼女らはたいがい「結婚のプロ」「婚活マスター」などと自称する。しかし資格制度はない。カウンセラーに必ずしも人を見る目があるわけではない。そもそも婚活体験は、ほとんどの場合、利用者のほうが豊富だ。とくに容姿のいいカウンセラーは恋愛の場で手痛くフラれた体験が少ないから、心の痛みがわからない。カウンセラーと自分とは容姿やスペックが違うことをよく知って、アドバイスを聞くべきだろう。

 筆者は相談所で知り合った50歳の画(え)の先生と相談所内交際の末、大失恋した。相談所が定める3カ月間の交際期間で20回以上会った後に断られたのだ。

 結婚相談所というクールな場の出会いのはずだった。ところが毎週会い、真剣に好きになり、相談所がルールに定めていた3カ月の交際期間の最後にふられた。彼女は同時に5人と会っていて、ほかの男性を選んだのだ。

 体中の力が抜けた。食事も喉を通らなくなった。直後に出会った2人の女性との身体だけの関係に溺れた。

 あのとき、自分より若く失恋体験の少ないカウンセラーはまったく頼りにならなかった。婚活は、人間が違い、男女の組み合わせが違えば、すべてパターンが異なる。それに対し、人の心理や行動について専門的に勉強しているわけではないカウンセラーがアドバイスするには無理がある。

婚活アリ地獄

 というわけで、婚活アプリ、婚活パーティー、結婚相談所の実情、体験、具体的な利用法について、2回にわたって述べてきた。婚活市場では、50代、60代でも需要があり、結婚のチャンスが失われていないことを理解していただけたのではないだろうか。

 ただし、ここに落とし穴があるとは思った。女性と出会い交際をしても、わずかな心の行き違いがある、とそれ以上頑張らない。また別の相手を探せばいい、と思ってしまうのだ。

 そして婚活を再開すれば、実際にまた新しい相手と出会える。だからすぐに見切りをつける。そんな負のスパイラルにはまってしまうのだ。

 40代、50代にもなると、男女とも自我が育ち切っている。好きなもの、そうでないものがはっきりしている。100%自分と合う相手などいない。それを知りながら、自分が心地よくいられる相手をいつまでも探し続け、婚活をやめられない。成婚できない。まさしく“婚活アリ地獄”だと思った。

 最後に、どのツールを選べばいいか――。経験的に感じたことを記したい。可能であれば、アプリもパーティーも相談所も全部試すのがいい。機会が多ければ、相手が見つかる可能性が高まるからだ。しかし、時間もお金もエネルギーも限度はあるだろう。

 ならば、何を基準に自分に向いているツールを選べばいいのだろうか。

 たとえば、仕事で頻繁にパソコンを使って連絡を取り合っているならば、婚活アプリを勧めたい。文章を書き慣れているからだ。

 営業職が長く、対面に強ければ、婚活パーティーがいい。初対面の相手と臆することなく会話できるからだ。対面での会話は、自分を実年齢よりも若く見せることができる。声を発し、身振り手振りの動作があり、表情を変化させて相手を惹きつけることができる。

 学歴、職歴、身長などスペックに自信があるならば、結婚相談所で有利に活動できるはずだ。コミュニケーション能力に自信がなくても、プロフィールがカバーしてくれる。

 中高年のシングルで、もし今後の人生を誰かと手を携えて生きていきたいと思ったのなら、年齢を理由に諦める必要はない。今の時代はいくつものチャンスが用意されているのだ。

石神賢介(いしがみけんすけ)
ライター。1962年生まれ。大学卒業後、雑誌・書籍の編集者を経てライターに。人物ルポからスポーツ、音楽、文学まで幅広いジャンルを手掛ける。著書に40代のときの婚活体験をまとめた『婚活したらすごかった』など。

週刊新潮 2021年7月1日号掲載

特集「諦めるのは早かった コロナ禍の不安で『結婚相談所』『パーティー』盛況 業者選びのポイントは? こんなに成立 還暦目前『婚活』体験記 後篇」より

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