給付金詐欺で逮捕された「経産省キャリア2人組」の際立つ悪質さ 余罪があるとの声も
新型コロナ対策の「家賃支援給付金」550万円を騙し取ったことで警視庁は6月25日、経済産業省の桜井真容疑者(28)と新井雄太郎容疑者(28)を逮捕した。2人はキャリア官僚で、給付金制度を熟知していた。ペーパーカンパニーを受け皿にするなど、その悪質さにはあ然とするばかりだ。
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家賃支援給付金とは、事業主が5割以上の売上減となった場合、事務所の家賃を最大600万円まで支援する制度。管轄する経産省のキャリア官僚が給付金詐欺を働いたというから開いた口が塞がらない。
2人は慶応高校の同級生だった。桜井容疑者は慶応大学からメガバンクに就職、2018年10月に経産省に入省した。最初資源エネルギー庁に配属され、20年7月から経済産業政策局産業資金課の係長に。新井容疑者は慶応大学から東京大学のロースクールに進学し、司法試験に合格している。経産省に入省したのは20年4月で、経済産業政策局産業組織課に所属していた。
経済産業政策局は政府の成長戦略を担当する部署で、有望なキャリアが集まると言われている。将来を嘱望された2人がなぜ、詐欺に手を染めたのか。
“頭隠して尻隠さず”
「2人とも、将来は幹部になった可能性があります。それにしても、家賃支援給付金を所管する経産省のキャリア官僚が給付金詐欺を行うなんて、まったく言葉を失ってしまいます」
と語るのは、経産省秘書課の担当者。
「報道では、給付金の受け皿はペーパーカンパニーとなっています。給付金の受け皿だけでなく、他の事業も計画していた可能性があります」
給付金を受け取ったペーパーカンパニーは、2人の名前から取った「新桜商事」(東京都文京区)といい、2019年11月に設立された。当初は新井容疑者が代表取締役を務めたが、20年3月、経産省に入省する直前、新井容疑者の親族に変更されたという。
新桜商事の会社の「目的」欄には、商標権・意匠権・知的財産権の取得、譲渡、使用許諾と記載されていた。知的財産権は経産省の所管。経産省の情報を利用して儲けようとしたのだろうか。
2020年7月に家賃支援給付金の申請の受付が始まると、新井容疑者が確定申告や売上台帳などを偽造して申請、今年1月に約550万円を会社名義の口座に入金させたという。
詐欺が発覚したのは、桜井容疑者の派手な生活がきっかけだった。高級外車2台所有し、高級時計を購入。千代田区一番町の家賃50万円のタワーマンションに住んでいた。月給より高い家賃のマンションに住んでいるという情報が警視庁に寄せられたことで、捜査を開始。当初、贈収賄を疑ったそうだが、家賃支援給付金詐欺だったことが判明したという。
「2人のキャリア官僚は頭が良くて、給付金制度を熟知しています。もっとも、受け取った給付金で豪遊してしまった。“頭隠して尻隠さず”ですね」
と解説するのは、詐欺事件に詳しいジャーナリストの多田文明氏だ。
コロナの給付金をめぐる詐欺では、「持続化給付金」をめぐっての不正はよく聞く。これは5割以上の売上減となった場合、個人事業主に100万円、中小企業に200万円が給付されるというものだ。制度が始まった20年5月から今年2月までの間の給付件数は約424万で、総額約5兆5000億円が支払われた。うち、じつに509人が詐欺で摘発されている。
一方、今回悪用された家賃支援給付金の家賃支援給付金の件数は約104万で、総額約9000億円だった。そのうち摘発されたのは12人だ。
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