不妊治療、原因は自分にあったはずなのに… 不倫相手を妊娠させてしまった夫の“本音”

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「実はつきあって半年になる彼女が…」

 浮かない顔の雄也さんには、もうひとつ重大な秘密があった。

「実はつきあって半年になる彼女がいるんですが、どうやら妊娠したようで」

 コズエさんのことが嫌になったわけではない。だが不妊治療から、「自分は欠陥品だ」という気持ちから逃れたくて、「つい」浮気をしてしまったのだという。相手は雄也さんの職場にアルバイトでやってきた28歳のユカリさん。劇団に所属して芝居をやっているのだが、コロナ禍で活動できなくなり、長期バイトで働くことにしたのだという。彼女の話は楽しく、軽くて明るい自分が戻ってきたと雄也さんは言う。

「僕が不妊の原因だということはユカリには言っていませんし、避妊はしていたんですが……。妊娠がわかって彼女は動揺しています。もちろん、僕も。自然妊娠は難しいと言われていたのに、皮肉な話ですよね。彼女が産むのか産まないのか、僕としては彼女の意志を尊重するしかない」

 コズエさんにバレたらどうするのかといったことは「まだ考えていない」と彼は言う。今、最優先するのはユカリさんの気持ちだから、と。それでもしばらく話していると、待ち受けている選択肢を考え始めた。

「もし彼女が産むことになったら、僕はコズエを失うでしょうね。でもコズエを失いたくないからユカリに産むなとは言えない。コズエを失ったらユカリと一緒になるかどうかはわかりません。求められれば認知はします。子どもに罪はないから。ユカリも僕も結婚生活って向いてない気がするんですよね。どっちにしろ、地に足のついた家庭はもてそうにない。そういう運命なのかなあとも思います」

 何が幸せなのかは人それぞれ。「幸せ」に重きを置くかどうかも人それぞれ。雄也さんが以前、考えていたように「家族を持たずに身軽に生きていく」のもまたひとつの選択肢だ。「今は毎日が苦しいけど、自分の人生と真剣に向き合ってみようと覚悟を決めた」という雄也さん。どういう結果が待っているのだろうか。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年6月30日掲載

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