首位奪取が見えてきた巨人、正二塁手を狙う「北村拓己」の魅力【柴田勲のセブンアイズ】

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 前回の今コラムで、巨人と首位・阪神とのゲーム差が「8」と「6」では大違いと記したが、巨人が25日からのヤクルト戦を3連勝、阪神がDeNAとの3連戦で今季初の同一カード3連敗を喫したこともあって、ゲーム差は「2.5」となった。

 シーズン折り返しの72試合目で今季初の7連勝、最大「8」あったゲーム差をわずか9日間で、ここまで縮めた。

 やはり前回、「希望が持てる」とも記した。追い上げにはもう少し時間がかかるかもと見ていたが、このゲーム差なら首位奪取へ射程圏内に入ったと言っていい。

 7連勝は19日(甲子園・阪神戦)から始まったけど、全部の試合で先発投手に勝ち星がついている。20日(阪神戦)は最少得点差で逃げ切ったが、あとの試合は結構得点差があり、中継ぎ投手陣も余裕を持って投げることができた。中川皓太が左肋骨骨折で戦線離脱している中でしのいだ。

 エース・菅野智之が離脱しているが、戸郷翔征と高橋優貴がリーグトップタイの8勝を挙げており、巨人に復帰した山口俊も初勝利を飾った。エンジェル・サンチェス、C.C.メルセデスもキッチリと役割を果たしている。投手陣は整備されてきた。

 となると、気になるのは菅野だ。今季3度目の登録抹消となった。7月1日の広島戦(東京ドーム)での復帰が濃厚だという。果たしてどうか。右ヒジの違和感。何度も言うようだが、こればかりは本人にしかわからない。ファームで捕手を立たせて投げるなどの調整を経て26日に1軍に合流した。

 本人が「100パーセントいけます」と請け合うのならともかく、ここで無理をして復帰し、結果を出せないようなら今後にますます影響が出る。右ヒジに違和感というか痛みがまだ残っていて、本来の投球を妨げている可能性もある。

 菅野は東京五輪の侍ジャパンメンバーに選ばれている。ここは万全の状態で復帰してほしい。いずれにせよ、復帰には慎重な見極めが必要だと思う。

 打線は4番の岡本和真を中心にうまく機能している。18日に1軍復帰した丸佳浩が本来の姿を取り戻し3番に座っている。5番には通算250号を放った坂本勇人、6番には22日復帰の梶谷隆幸が控える。

 これまで岡本和は離脱者が出る状況で開幕から4番に座り続けた。責任を一身に背負い、打席に立ってきた。当然、相手投手のマークはきつかった。でも、丸の本格復調などでマークが分散され、岡本和も気を楽にして打席に入ることができるようになった。

 27日のヤクルト戦では6回に決勝の3ランを右翼席に運んだ。打点は独走状態の「66」だ。原辰徳監督は「チームの中でも信頼というものはあるし、みんなで託す。そういうところもすごく出てきている」とコメントしていた。岡本和の4番としての勝負強さに太鼓判を押していたし、いまの巨人打線は岡本和にどうやってチャンスを回すかになっている。

 決勝の3ランも1番・松原聖弥、2番・ゼラス・ウィーラーの連続安打を足場に築いた1死一、三塁から生まれている。

 それにここに来て、北村拓己が頭角を現し始めた。左手中指の骨折で登録を抹消された吉川尚輝に代わって、このところ二塁手でスタメン出場している。もともと思い切りのいい打撃が売りだったが、22日のDeNA戦(金沢)で放った一発で改めて証明した格好となった。

 二塁手はここ数年、巨人の懸案事項だった。しかし吉川尚が交流戦で活躍して決まったかと見えたがケガで離脱した。ここは北村にとってチャンスである。二塁手のライバルは吉川尚の他に両打ちの若林晃弘、湯浅大、増田大輝がいるが、そろってスピードをアピールポイントにしている。同じようなタイプだ。

 北村が正二塁手をモノにするためにはやはり打撃だ。金沢が故郷だというが、ここでの一発が飛躍への突破口になったのかもしれない。ボール球を振らず、自分が打てる球を積極的に狙っていくべきだ。打ちたい、打ちたいという気持ちが強いとどうしてもボール球に手を出してしまう。

 ベンチにとって打力のある選手は頼もしいし心強い。これは捕手にも言える。捕手の評価としてよく「リードが優れている」とか、「キャッチングがうまい」なんて言うけど、最終的にベンチが起用したいのは打てる捕手である。

 大城卓三が不動の捕手になるためにはリード面の勉強はもちろんのこと、ますますの打力アップだろう。

 首位の阪神だが、さすがに開幕からの勢いが落ちてきた。チームを引っ張ってきた新人・佐藤輝明にも陰りが見える。相手投手たちも対策・研究を重ねており、マークがかなりきつくなっている。いつまでも打たせていられないということだろう。

 巨人は29日から広島(東京D)、DeNA(神宮)の6連戦だ。投打ともに上向きだが、やはり気になってしまうのが7月1日に復帰が有力視される菅野の出来具合だ。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮取材班編集

2021年6月29日掲載

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