「金融危機がやって来る」と叫ぶ韓国銀行 年内利上げを予告、バブル退治も時すでに遅い?
「半年後に危機」と予報
――本当に利上げしたらバブルが崩壊してしまうのでは?
鈴置:「今のうちに崩壊させなければ傷はますます深くなる」との判断でしょう。利上げは確かに劇薬ですが、バブルを放置して取り返しのつかない悲劇が到来するよりはいい。
6月22日には「新兵器」も繰り出しました。韓銀は半年ごとに発行する「金融安定報告書」の2021年上半期版をこの日に公表しました。
この報告書は当然、投機の危険性を訴えましたが、新たに作成した「金融脆弱性指数(FVI: Financial Vulnerability Index)」を盛り込んだのがミソでした(4ページと107ページ)。
株価や不動産といった資産価格の過度の上昇、信用の過多な供与による金融の不均衡、対内外の衝撃を吸収しうる金融機関の復元力を指数化したもので、潜在的な金融リスクを分析します。
FVIは数値が大きいほどリスクが高い。韓国がIMF(国際通貨基金)に救済を申請した1997年秋の通貨危機の半年前――同年第2四半期がピークで、これが100となるよう設定してあります。
直近の2021年第1四半期は58・9。「コロナ前」の2019年第4四半期の41・9から跳ね上がっています。このグラフの中では2008年第2四半期の73・6が最高値。約半年後に、世界同時金融危機に突入しています。
――不気味なグラフですね。
鈴置:過去の例から見て、FVIは4カ月から半年先を見通すようです。韓銀はこのデータからも、今年秋口には危機水域に進入すると危機感を強めているのです。
韓銀は2011年から「金融安全指数(FSI: Financial Stability Index)」を公表してきました(3ページ)。これも金融危機の警戒システムですが、今年5月時点ではリスクは低いままで「注意段階(8)」以下に留まっています。
2008年の金融危機や2020年4月の「ミニ危機」の際には危機段階(22)を付き抜けています。これらからすると、現実とほぼ同時に変化する指標です。韓銀は予測ツールとしては、FSIはやや頼りないと考え、FVIを導入したのです。
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