事件現場清掃人は見た 孤独死した「50代男性」の病が生んだ“犯罪行為”
孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、孤独死した50代男性について聞いた。
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総合失調症などの治療薬である向精神薬は、近年、ネット上での販売が増え社会問題となっている。麻薬と同様、中枢神経に作用して高揚感を与え、依存症になりやすい。向精神薬依存症からの離脱は、ヘロイン依存症より難しいとも言われている。
言うまでもなく、向精神薬を譲渡すれば向精神薬取締法違反となり3年以下の懲役、営利目的の譲渡であれば5年以下の懲役となる。
今回ご紹介する孤独死した男性も向精神薬を使用していた。
「14、5年前の話です。マンションの管理会社から依頼でした。50代の男性が亡くなってから2カ月後に発見されたという話でした」
と語るのは、高江洲氏。
現場は、都心にある6階建てビルの一室だった。
子機を握ったまま
「部屋のドアを開けると、強烈な死臭にむせ返りそうになりました。現場は2階で、間取りは1Kでした。男性は蒲団の上で病死していましたが、死後2カ月も経っていたので、室内はひどい有様でした」
蒲団には遺体の痕跡がくっきりと残っていたという。
「体液は床材を通り越して、コンクリートにまで染み込んでいました。ここまで浸透してしまうと、床材を張り替え、体液が染み込んだコンクリートを削ってコーティングする必要があります」
なぜ、2カ月も遺体が発見されなかったのか。
「家賃は銀行引き落としでしたので、管理会社の人が部屋を訪れることはありませんでした。また、ワンフロアに一部屋しかなく、外廊下という造りだったので、死臭もビル内に籠りません。それで発見が遅れたのでしょう」
男性が亡くなった蒲団の周囲には、ゴミが散乱していたという。
「ゴミと混じって、電話の子機がありました。よく見ると、手の跡がべっとりと付いていました。子機を握ったまま亡くなっていたのです。最期に誰と話していたのでしょうか」
高江洲氏は、ひと通り清掃を終え、遺品の整理にとりかかった。
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