世界が注目する日本発「抗老化サプリ」 「NMN」「5-ALA」の驚きの効果とは
体のさまざまな機能を増強
NMNの価格が下がるのを待っていられない、という方も悲嘆する必要はない。もう一つの若返り物質である「5-ALA」はすでに一般人でも手の届く価格の商品が売られている。例えばネオファーマジャパン社の5-ALAサプリは60粒入りで1万1880円。1粒198円である。ちなみに同社は5-ALA生産・販売のパイオニア企業だ。
5-ALAの正式名称は「5-アミノレブリン酸」で、天然アミノ酸の一種である。体内で作られるだけではなく、納豆などの発酵食品にも多く含まれる。
「5-ALAはミトコンドリアで1日に数グラム作られますが、病気や加齢にともなって生成量が低下します」
そう説明するのは、ネオファーマジャパン、チーフサイエンティストで高知大学客員教授の田中徹氏。
「人体では5-ALAはヘムという物質のもとになります。具体的には、ミトコンドリア内で生成された5-ALAは一旦ミトコンドリアの外に出て、ポルフィリンに代謝され、再びミトコンドリアの中に入り、鉄と結合してヘムになります。そのヘムはミトコンドリア内の『呼吸鎖複合体』に取り込まれ、そこではアデノシン三リン酸(ATP)という物質が生み出されます。ATPは生命のさまざまな活動のエネルギー源となる物質です」
メカニズムはいささか複雑なのだが、単純化すれば、5-ALAには、ミトコンドリアを活性化・増殖させる役割があるのだ。
「体内の5-ALAは生まれた時にはほとんどゼロですが、どんどん増えていき、17歳の時にピークを迎え、それ以後は減る一方となります」(東京大学名誉教授でもある、長崎大学大学院の北潔教授)
田中氏は、
「年をとると5-ALAの生成能力が落ちてヘムが十分に作れなくなり、生命のエネルギー源であるATPが生み出されなくなる。それが老化と言われているものではないかと考えられます」
として、ある実験結果について触れる。
「東工大との共同研究で、マウスに5-ALAを投与したところ、呼吸鎖複合体の活性が促され、ATPの生成量が向上しました。筋肉内では約10倍ものATPが作られるようになりました。また、老化したマウスに投与すると、元気に動き回るようになりました」
先のNMNと似た結果が出たわけだが、「糖尿病」に対する効果が見込まれるという共通点も。
「山形大学との共同研究で5-ALAの生産が低い遺伝子組み替えマウスは糖尿病となり耐糖能異常を示しましたが、1週間5-ALAを飲ませるだけで正常になったのです。糖尿病の治療を行っている人に投与した試験でも、いい結果が出ています。特にバーレーンで行った試験では、糖尿病の薬2剤を限度まで飲んでいる患者さんのHbA1c(血糖値をはかる指標)が8・6から6・1まで改善しました」(同)
先の北教授も言う。
「5-ALAを飲むとミトコンドリアが活性化するので、免疫力も高まり、体のさまざまな機能が増強されます。肉体的な面だけではなくメンタル面もそうで、認知症などにも効くのではないかと考えて研究を進めている方もいます。確かに、ミトコンドリアが元気になるとATPが増え、神経が活性化されて、アルツハイマー病などが改善する可能性はあります」
特に高齢者の方々にとって必須のサプリとなる可能性があるわけだ。加えて言えば、昨年10月、北教授が率いる長崎大学の研究チームは、5-ALAに新型コロナウイルスの増殖を抑制する効果がある可能性を発表している。驚くべき「万能性」ではないか。
体内時計と深く関係
「5-ALAをいつ頃から飲み始めればいいのかと聞かれた時、厄年スタートをおすすめしています。女性37歳、男性42歳ですね。それくらいの年代がちょうど体の変調を感じやすいですから」(先の田中氏)
その効能に驚愕し、5-ALA関連の販売会社を自ら設立したという男性は、
「40代半ばから飲み始めてもう15年くらいになります。飲み始めてすぐ、翌日シャキッとしていて、目覚めが良くなるなどの効果は感じられたのですが、その一方で本当に5-ALAのおかげなのかという疑いも持っていました。そこで、しばらく続けた後にちょっと飲むのを止めたりもした。すると、飲んでいる時のほうが明らかに体調が良いのです。特に季節の変わり目に必ず体調を崩していたのですが、飲み始めてから体調を崩すことが全くなくなりました」
5-ALAを飲まない時の「疲れやすさ」を10とすると、飲んでいる時は5以下になるという。
「59歳になった今も白髪はあまり増えず、全体的には黒いままです。あと、長い付き合いの人には“時が止まっているように全然変わらない”と言われます」
無論、効果の感じ方は人それぞれ。何より、サプリに頼らずに若さを保つことができるならそれが一番である。
先の今井教授によると、老化と密接な関係がある体内物質NADが減少するのを防ぐには、「運動」と「生活リズム」が大事だという。
「運動することによってNADを上昇させることができます。激しい運動ではなく、ウォーキングなど軽い運動で大丈夫です。あと、NADの合成は、サーカディアンリズムという体内時計と深く関係しています。マウスは夜行性なので夜、ヒトは昼行性なので昼、活動期にNADが上がるようになっています。そのリズムを正確に保つことがとても重要なのです」
体内時計のリズムを正確に保つための方法として今井教授は「食事」を挙げる。
「活動期の頭に最も高いカロリーをとることが大事です。簡単に言えば、朝食をちゃんと食べましょう、ということです」
今井教授は実生活でもそれを実践しており、
「私と家内は14年に一念発起して、朝食に夕食で食べるようなボリュームのあるものを、夜はワインを1、2杯とフルーツやハムやナッツやチーズを少し食べて終わり。8時までには食べ終わるという生活習慣に切り替えました。この生活を始めてから体調はとてもいい。何を食べるか、よりも、いつ食べるか、の方が体にとっては重要です」
そう話す今井教授は現在56歳だが、40代後半と言っても通りそうなほど、若々しさを保っている――。
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